ルイ・ド・ジョクール

ルイ・ド・ジョクールの生涯と業績

ルイ・ド・ジョクール（Louis de Jaucourt）は、1704年9月16日にフランスのパリに生まれ、1779年2月3日に亡くなった医師であり、啓蒙思想家、著作家です。彼は特に『百科全書』への貢献で知られており、全体の約25％にあたる18,000もの記事を執筆しました。社会や歴史、科学に幅広く関心を持ち、自由主義的な思想を持ちながらも、その出自は貴族的でした。

学問と執筆への道のり

ド・ジョクールは、ジュネーヴで神学を、ケンブリッジ大学で自然科学を、そしてライデンで薬学を学びました。その後フランスに戻り、彼の最も重要な著作の一つである6巻から成る解剖学の書『Lexicon medicum universalis』の執筆に20年をかけました。しかし、出版のために送った原稿が運搬中に沈没してしまい、彼の努力は無に帰しました。この経験は彼の後の執筆活動にも影響を与えたことでしょう。

『百科全書』との関わり

ド・ジョクールが『百科全書』に関わることになったのは、出版者ミシェル＝アントワーヌ・ダビッドに依頼されて寄稿したことからでした。彼は1759年から1765年の間に、1日平均8つの記事を執筆し、最終的に合計17,266の記事を執筆しました。これは全記事71,818項目の約25%に相当し、彼は百科全書の最大の執筆者となりました。その創作はおおよそ4,700,000語に及び、特に後半の10巻から17巻では、全体の30%から45%が彼の手によるものでした。「百科全書の奴隷」とのあだ名も与えられました。

執筆スタイルと思想

他の多くの執筆者が経済的理由から執筆活動を行っていたのとは異なり、ド・ジョクールは裕福であったため、報酬を求めず、作品に専念しました。彼の多くの記事は書籍文献の要約であり、既存の情報源からの引用が多く見られました。さらに、自らの費用で秘書を雇い、執筆の手伝いをさせる一方、主に科学分野、特に薬学や生物学においては、機械論の立場から記述を行いました。これに対し、メニュレ・ド・シャンボーのように生気論の立場を取った執筆者もいました。

ジャンルを問わず多くの分野で執筆したド・ジョクールですが、特に社会や歴史についての記事には、彼の政治的、思想的立場が反映されています。例えば、戦争、君主国、重要な歴史的人物、さらにはムハンマドに関する記事を書きました。ディドロやヴォルテールのように明確な政治的スタンスを公にすることは少なかったものの、自由主義的な見解は顕著でした。彼の歴史的作品のいくつかには、過去の政治制度と当時のフランスとの比較が行われており、過激かつ反宗教的な内容が含まれていました。また、奴隷制度や奴隷市場に関する記事は、自らの自由と権利に対する批判で満ちていました。

晩年と評価

ド・ジョクールは、ロンドン王立協会をはじめとする多くのアカデミーの会員に選ばれ、その業績は高く評価されました。長い間、彼の功績は他の著名な思想家の影に隠れていましたが、20世紀中頃より再評価が進み、彼の貢献が再び注目されるようになりました。また、1990年には彼の名前を冠した小惑星(6977)ジョクールが発見されるなど、彼の遺産は今も生き続けています。

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