ルイ・ル・ブルトン

ルイ・ル・ブルトン

フランスの画家、ルイ・ル・ブルトン（Louis Le Breton）は、1818年にブルターニュ地方、フィニステール県の港町ドゥアルヌネに生まれ、1866年にその生涯を終えました。彼は主に海景画を専門とし、フランス海軍の画家として重要な記録画や海洋画を数多く残しました。

初期教育と海軍医として

医師の家に生まれたル・ブルトンは、カンペールの学校で基礎教育を受け、その後、医学を志します。1836年にはブレストの海軍医学校に入学。翌1837年には課程を無事修了し、海軍の三等軍医に任官しました。

世界一周探検航海への参加

彼の人生における特筆すべき転機は、著名な探検家ジュール・デュモン・デュルヴィルとの出会いでした。デュモン・デュルヴィルとは遠縁にあたるとされ、その縁もあってか、ル・ブルトンは1837年から開始されたデュモン・デュルヴィル指揮下の第三次世界一周探検航海に参加することとなります。当時まだ18歳であった彼は、探検船アストロラーベ号の乗組員として、医師の任務にあたりながら航海に臨みました。

航海中、船上で彼の絵の才能が見出され、公式探検画家であったエルネスト・グーピルから直接、絵画の指導を受ける機会を得ました。この指導は短期間でしたが、ル・ブルトンの画業の基礎を築く上で貴重な経験となりました。しかし、1838年に船団内で赤痢が蔓延し、グーピルもまた1840年1月に病に倒れ、帰らぬ人となります。図らずも、ル・ブルトンがその後任として探検記録画家の責務を引き継ぐことになりました。彼は困難な状況下、航海の記録として各地の風景や動植物、先住民の姿などを克明に描き残しました。1840年に無事世界一周航海を終えてフランスに帰還すると、その功績が認められ、レジオンドヌール勲章シュヴァリエを授与されました。

海軍海洋画家としての活動

帰還後もル・ブルトンは海軍に留まり、1844年には船医として別の軍艦に配属されます。しかし、1846年には健康上の理由からフランス本国へ送還されることになります。その後、彼は医師としての実務から離れ、海軍の海洋画家として公式な立場で筆を執り続けました。そして、1848年に軍籍を離れ、画家としての道を本格的に歩むことになります。

彼の描く海景画は、長年にわたる船上生活と航海で培われた経験に基づき、海の様々な表情や船舶のディテールを写実的に捉えていました。

『地獄の辞典』挿絵

ル・ブルトンの活動は、海洋画や探検記録画に留まりませんでした。彼の作品として特に異彩を放ち、広く知られるのは、コラン・ド・プランシーによる有名なオカルト書『地獄の辞典』（Dictionnaire Infernal）の1863年増補版のために制作された挿絵です。彼はこの書籍のために、69点の神秘的で想像力豊かな悪魔のイラストを創作しました。これらのイラストは、M.ジャローによって版画化され、書籍に収録されました。医学、探検、海洋画、そして悪魔の挿絵と、ル・ブルトンのキャリアと画業は多岐にわたり、その多様性が彼の芸術家としてのユニークさを物語っています。

参考文献や展覧会カタログなどによって、彼の生涯や作品に関する研究が進められています。

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