ルイーズ・カトリーヌ・ブレスラウ

ルイーズ・カトリーヌ・ブレスラウ：才能と苦難を乗り越えた女性画家

ルイーズ・カトリーヌ・ブレスラウ（Louise Catherine Breslau, 1856年12月6日 - 1927年5月12日）は、19世紀後半から20世紀初頭にかけてフランスで活躍した画家です。ドイツで生まれ、スイスで育ち、パリでその才能を開花させました。女性が芸術家として認められることが難しかった時代に、独自のスタイルと卓越した技術で、多くの人々に感動を与えました。

生い立ちと教育

ブレスラウは、ドイツのミュンヘンで、医学者の父のもとに生まれました。幼少期から喘息を患い、療養生活を送る中で絵を描き始めました。父親がチューリッヒ大学の教授に就任したことをきっかけに、家族でスイスに移住。その後、ボーデン湖近くの修道院で教育を受け、芸術家になる決意を固めました。

絵画の基礎をチューリッヒの画家、フィッファー(Eduard Pfyffer)から学んだ後、女性が本格的に絵画を学ぶにはパリしかないと考え、1874年に母親と共にパリへ移住します。当時のパリ国立高等美術学校は女性の入学を認めていなかったため、私立の美術学校であるアカデミー・ジュリアンに入学。ここでは、トニ・ロベール＝フルーリーなどの著名な教授陣から指導を受け、才能を開花させていきました。

画家としての成功

アカデミー・ジュリアンでブレスラウは、後に「日記」が出版された女性画家マリ・バシュキルツェフからライバル視されます。また、アイルランド人女性画家のセアラ・パーサーとは生涯にわたる友人関係を築きました。1879年、アカデミー・ジュリアンの女子学生として初めてサロン・ド・パリに肖像画を出展し、注目を集めます。その後、パリに自身のスタジオを開設し、毎年サロンに出展。友人や著名人の肖像画を数多く手掛け、その才能を高く評価されました。

1880年にはブルターニュに滞在し、「写実主義」の画家、ジュール・ブルトンと知り合い、影響を受けます。1881年には名前をフランス風の「ルイーズ・カトリーヌ」とし、作品には「LCB」と署名するようになりました。美術雑誌「ラ・ヴィ・モデルネ(La Vie Moderne)」に印象派の画家についての記事を寄稿し、文学者のアルフォンス・ドーデはブレスラウの作品について言及するなど、次第にその名声は確立されていきました。

さらなる活躍と晩年

ブレスラウの作品は、展覧会で大衆や批評家から好評を博し、パリの裕福な顧客からの注文が相次ぎました。ロンドンやチューリッヒでも作品を展示し、1883年にはジュネーブの美術館に作品が買い上げられました。1897年にはフランス政府にも作品が買い上げられ、現在、オルセー美術館に収蔵されています。1889年のパリ万国博覧会の展覧会で金メダルを受賞。1890年に国民美術協会が再興された際には、創立メンバーの一員に選ばれました。1900年のパリ万国博覧会ではスイスの展示役員を務め、自身も金メダルを受賞。1901年にはレジオン・ドヌール勲章シュヴァリエを受勲しました。

第一次世界大戦中もパリに留まり、出征兵士の肖像画を家族のために描きました。1917年には戦死した有名なパイロット、ジョルジュ・ギンヌメールの肖像画を手掛けています。戦後、健康状態が悪化しながらも制作活動を続け、1921年には回顧展が開かれました。1925年にはチューリッヒでの展覧会に出席するためにスイスに帰国。1927年、パリで生涯を閉じました。

ルイーズ・カトリーヌ・ブレスラウは、困難な時代に自らの才能を信じ、努力を重ねることで、女性画家としての地位を確立しました。彼女の作品は、現在も多くの人々に愛され、その生涯は、芸術を志す人々に勇気を与え続けています。

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