マリ・バシュキルツェフ

マリ・バシュキルツェフの生涯と芸術

マリ・バシュキルツェフ（1858年11月11日 - 1884年10月31日）は、19世紀後半に活躍した、ウクライナ出身の画家、彫刻家、そして日記作家です。本名はマリヤ・コンスタンチーノヴナ・バシュキルツェヴァといい、ロシア帝国の富裕な貴族の家庭に生まれました。幼少期から母親に連れられてヨーロッパ各地を転々としながら教育を受け、その中で芸術への関心を深めていきました。

フランスでは、当時女性を受け入れていた数少ない美術学校の一つであったアカデミー・ジュリアンに入学し、本格的に絵画を学び始めました。この学校には、ヨーロッパ各地から若い女性が集まっており、バシュキルツェフはそこで、同じく画家であるルイーズ・カトリーヌ・ブレスラウをライバル視していました。

バシュキルツェフは、25歳という若さで結核によりこの世を去りましたが、その短い生涯で多くの作品を遺しました。特に、パリの貧民街の子供たちを描いた「集合」や、女性画家たちの群像を描いた「アトリエにて」は、彼女の代表作として知られています。しかし、第二次世界大戦中にナチス・ドイツによって彼女の作品の多くが破壊されてしまったことは、非常に残念な事実です。

文筆家としての才能

バシュキルツェフは、13歳から日記を書き始めました。その日記は、彼女の芸術家としての活動だけでなく、当時のブルジョワ女性の内面を赤裸々に描いたものとして、高く評価されています。彼女の個人的な評価や、女性芸術家としての苦悩が綴られた日記は、まるで小説のような読み応えがあり、後世の多くの人々に影響を与えました。

カナダの作家メアリー・マクレーンも、バシュキルツェフの日記に感銘を受け、自身の著述活動に活かしたとされています。また、文豪ギ・ド・モーパッサンとの往復書簡は、1891年に書簡集として出版され、彼女の文学的な才能も証明しました。

フェミニストとしての側面

バシュキルツェフは、フェミニストとしても活動していました。1881年には、ポーリーヌ・オレルというペンネームで、ユベルティーヌ・オークレールのフェミニズム新聞「女性市民」に寄稿しています。「われわれ女は、犬を愛することにしよう。犬だけを愛しよう。男と猫は創作に値しない」という彼女の言葉は、当時の女性の社会的な立場に対する強い不満を表しています。

夭逝と遺産

バシュキルツェフは、25歳という若さで結核のために亡くなりましたが、1880年代のパリの知的な社会の一員として、十分な時間を過ごすことができました。彼女の亡骸は、パリのパッシー墓地に埋葬されています。

近年まで、バシュキルツェフの生年は1860年とされてきましたが、フランス国立図書館で彼女の自筆日記の原本が発見されたことで、この情報が誤りであることが明らかになりました。日記は、遺族によって検閲され、短縮されていたのです。この短縮版は、フランスで16巻に分けて出版されており、抄録は英語にも翻訳されています。

作品ギャラリー

（画像は省略）

参考文献

Bashkirtseff, Marie "Mon journal", volumes I-XVI; texte intégral transcrit par Ginette Apostolescu. - Montesson (5 rue Jean-Claude-Bézanier, 78360 ) : Cercle des amis de Marie Bashkirtseff, 2005
"I Am the Most Interesting Book of All: The Diary of Marie Bashkirtseff" (English translation by Phyllis Howard Kernberger, Katherine Kernberger), Chronicle Books (June 1, 1997)
Cronin, Vincent. Four Women in Pursuit of an Ideal. London: Collins, 1965; also published as The Romantic Way. Boston: Houghton Mifflin, 1966.

外部リンク

Marie Bashkirtseffの作品 （インターフェイスは英語）- プロジェクト・グーテンベルク
Journal de Marie Bashkirtseff-マリ・バシュキルツェフの日記（野上豊一郎・訳に準拠）
マリア・バシュキルツェフの日記（青空文庫、宮本百合子・訳）

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