ルイ＝リュック・ロワゾー・ド・ペルスュイ

ルイ＝リュック・ロワゾー・ド・ペルスュイ

ルイ＝リュック・ロワゾー・ド・ペルスュイ（Louis-Luc Loiseau de Persuis, 1769年7月4日 - 1819年12月20日）は、フランスの多才な音楽家であり、ヴァイオリニスト、指揮者、合唱指揮者、教育者、作曲家、そして劇場監督として幅広い活動を展開しました。彼のキャリアの中心はパリ・オペラ座にあり、一介の演奏家から劇場の最高責任者である総監督へと昇り詰める異色の経歴を歩みました。

生涯

ペルスュイは故郷であるメスで音楽教育の第一歩を踏み出しました。その後、音楽家としてのキャリアを本格的に追求するため、1787年にフランスの首都パリへと移住します。1793年には、当時フランスで最も重要な舞台芸術の拠点であったパリ・オペラ座の管弦楽団の一員として活動を開始しました。彼は生涯の大半をこの権威ある劇場と共に歩むことになります。

オペラ座内での地位を徐々に確立し、1803年には合唱を統括する合唱指揮者に任命されました。さらに1810年には、長年にわたり指揮者を務めたジャン＝バティスト・レイの後任として、劇場の音楽を司る指揮台に立ちます。この頃から、ペルスュイは音楽的な役割だけでなく、劇場運営における管理業務にも深く関わるようになりました。彼の経営能力も認められ、1816年には音楽全体の責任者である音楽監督に就任し、翌1817年には舞台演出などを統括する舞台監督の役職も兼任します。そして、1817年9月3日には、ついにオペラ座のトップである総監督の座に就きました。彼は病に倒れ、その職務の継続が困難となる1819年11月13日に退任するまで、劇場の最高責任者として采配を振るいました。ルイ＝リュック・ロワゾー・ド・ペルスュイは、総監督を辞して間もない1819年12月20日、パリでその波乱の生涯を閉じました。

作品と貢献

作曲家としてのペルスュイは、バレエ、オペラ、オペラ・コミックといった様々なジャンルで作品を生み出しました。彼の創作活動の中で最も顕著な成功を収めたのは、1807年に初演されたオペラ「トラヤヌスの勝利（Le triomphe de Trajan）」です。この作品は、当時の著名な作曲家ジャン＝フランソワ・ル・スュールとの共作として発表され、その後のオペラ座で非常に人気を博しました。

特に1810年から1815年にかけてのオペラ座では、ペルスュイは最も上演機会が多かった作曲家の一人となりました。彼の代表作である「トラヤヌスの勝利」を中心に、このわずか5年間で157回もの公演が行われるなど、当時のパリの聴衆から絶大な支持を得ていたことが伺えます。また、彼が作曲したオペラ・コミックも好評を博し、サル・ファヴァール劇場などでしばしば上演されました。

作曲活動の傍ら、ペルスュイは異文化間の音楽交流にも貢献しました。彼は、マクシミリアン・シュタードラーが作曲したオラトリオ「十字軍（Die Befreyung von Jerusalem / Les Croisés, 1813年）」など、他の作曲家の重要な作品の翻訳も手掛けています。

教育への関与

ペルスュイは、後進の指導にも熱意を示しました。1802年頃まで、彼は権威あるパリ国立高等音楽・舞踊学校（コンセルヴァトワール）で歌唱クラスを指導していました。オペラ座においても、彼の経験と指導力を活かす形で、劇場の付属歌唱学校を設立する構想がありましたが、これは残念ながら実現には至りませんでした。しかし、公式な学校設立が叶わなかった後も、ペルスュイは非公式ながら有望な若い歌手たちへの指導を続け、次世代の育成に貢献したと言われています。

ルイ＝リュック・ロワゾー・ド・ペルスュイは、ヴァイオリニスト、指揮者、作曲家、教育者、そして劇場の最高経営者という多岐にわたる顔を持つ人物として、ナポレオン時代を中心とするフランスの音楽界と劇場界に確かな足跡を残しました。彼のキャリアは、演奏、創造、運営、教育という様々な角度からオペラ座の発展に貢献したことを物語っています。その多才さと功績は、当時のパリの芸術シーンにおいて見過ごすことのできない存在であったことを示しています。

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