ルイ＝レオポール・ロベール

ルイ＝レオポール・ロベール

ルイ＝レオポール・ロベール（Louis Léopold Robert、1794年5月13日 - 1835年3月20日）は、現在のスイス、ヌーシャテル州のラ・ショー＝ド＝フォンに生を受けた画家です。19世紀前半に活動し、特にイタリアにおける風俗描写で評価されましたが、その生涯は短いものでした。

画業の始まりと修業

16歳を迎える頃、ロベールは故郷を離れてパリへと渡ります。当地で彼は、同郷のスイス出身の版画家であるシャルル・サミュエル・ジラルデに版画の技法を学びました。また、絵画に関しては、当時のフランス画壇を牽引していた新古典主義の巨匠、ジャック＝ルイ・ダヴィッドのもとで指導を受けました。ダヴィッドに師事したことは、彼の画風形成において重要な礎となったと考えられます。

イタリアでの活動

1818年、ロベールはさらなる研鑽のため、イタリアへと留学します。このイタリア滞在中に、彼は特に風俗画の分野に傾倒していきました。人々の日常生活や地域の特色を描き出すことに魅力を感じ、多くの作品を手がけます。1822年頃からは、南イタリアの都市ナポリに居を移しました。ナポリの活気ある街並みや人々の姿は、彼の創作活動に新たな刺激を与えたことでしょう。彼はここでイタリアの光景を題材にした一連の作品を生み出し、画家としての地位を確立していきます。

晩年と悲劇的な最期

しかし、イタリア滞在中の1822年頃から、ロベールの精神状態は不安定になり始め、うつ病を患ったとされています。心労を抱えながらも創作活動を続けていましたが、病状は次第に深刻化していったようです。そして1835年3月20日、滞在していたナポリの地で、彼は自ら命を絶つという悲劇的な最期を遂げました。40歳という若さでした。

自殺の背景に関する説

ロベールの早すぎる死、特に自殺という形には、当時の人々や後世の研究者たちも心を痛め、その原因について様々な憶測がなされました。中でも有名な説として、ナポレオン1世の兄であるジョゼフ・ボナパルトの末娘、シャルロット・ボナパルト（Charlotte Bonaparte, 1802年-1839年）との間に抱いていた恋愛感情が、自殺の遠因となったとする話があります。

シャルロットは美術に関心が深く、1824年にアメリカからヨーロッパに戻った後、パリでダヴィッドから絵画を学んだ人物です。また、ロベールからも版画の指導を受けていたとされています。二人の間には師弟関係以上の感情が存在した可能性が指摘されており、特にロベールがシャルロットに対して一方的な、あるいは成就し得ない愛情を抱いていたことが、彼の精神的な苦悩を深め、最終的に自殺へと至らしめたのではないか、という見方です。シャルロットは1826年にいとこであるナポレオン・ルイ・ボナパルトと結婚しており、この事実がロベールの絶望につながった可能性も推測されています。この恋愛説は、ロベールの悲劇的な生涯を語る上でしばしば言及されるエピソードとなっていますが、その真偽や自殺への実際の関与度は明確ではありません。

ルイ＝レオポール・ロベールは、イタリアの風俗を描写した独自の画風で名を残しましたが、その才能は志半ばで途絶えることとなりました。彼の短いながらも情熱的な生涯は、今日でも多くの人々の関心を引いています。

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