ルカ・ギーニ

ルカ・ギーニ

ルカ・ギーニ（伊: Luca Ghini、1490年 - 1556年5月4日）は、ルネサンス期イタリアで活躍した医師であり、近代植物学の発展に大きく貢献した先駆的な植物学者です。彼の最も特筆すべき業績は、記録に残るヨーロッパで最初の標本館（ハーバリウム）および植物園を設立したことであり、これは植物の系統的な研究や教育の方法に革命をもたらしました。

生い立ちと初期の経歴

ギーニは、現在のイタリア共和国エミリア＝ロマーニャ州に位置するボローニャ近郊、カザルフィウマネーゼの貴族の家に生まれました。ボローニャ大学で医学を修めた後、同大学で薬用植物に関する講義を担当し、植物学の教育者としての道を歩み始めました。彼の教えは高く評価され、1527年までにはこの分野の教授に昇任しています。

ピサ大学への移籍と植物園の設立

1544年、ギーニはトスカーナ大公コジモ1世の招きを受け、ピサ大学へと活動の場を移しました。この移籍の主な目的は、新たな植物園を設立することでした。植物園建設のため、ギーニは弟子のウリッセ・アルドロヴァンディ、アンデレア・アルパーゴ、フランチェスコ・カルツォラーリらと共に、植物採集に奔走しました。彼らはエルバ島、バルド山、ガルダ湖など、イタリア各地を巡り、多様な植物標本を集めました。これらの努力が実を結び、1544年にはピサ植物園（Orto botanico di Pisa）が開設されました。これはヨーロッパで現存する最古の大学植物園の一つとされています。また、ギーニはフィレンツェに設立された植物園、センプリチ庭園の建設にも助言や協力を惜しみませんでした。

標本館（ハーバリウム）の確立

ルカ・ギーニのもう一つの画期的な貢献は、乾燥させた植物を台紙に貼り付けて保存する標本館、すなわちハーバリウムの概念を確立したことです。これにより、植物は季節や場所に関係なく、いつでも詳細に観察・比較研究することが可能となりました。彼の作った標本館は、弟子の手によって引き継がれ、植物研究の重要な基盤となりました。

著作と後世への影響

皮肉なことに、ルカ・ギーニ自身の著名な著作はほとんど残されていません。彼の研究成果や知識は、主に彼の教えを受けた多くの優秀な植物学者たちの著作を通じて後世に伝えられています。アンドレア・チェザルピーノやピエトロ・アンドレア・マッティオリといった高名な学者たちがギーニの薫陶を受け、彼らの著作の中でギーニの研究内容が引用されたり、発展させられたりしています。このように、ギーニの教育と研究活動は、後の世代の植物学研究者に計り知れない影響を与えました。

晩年

1554年、ギーニは故郷のボローニャに戻り、再びボローニャ大学で医学の講義を行いました。彼はその地で生涯を終え、1556年5月4日に亡くなりました。彼の革新的な取り組みは、植物学を単なる薬草学の枠を超え、科学的な分類と体系化へと導く重要な一歩となりました。

参考文献

Franco Aurelio Meschini, Ghini, Luca. In: Dizionario Biografico degli Italiani, Vol. 53, Istituto dell'Enciclopedia italiana Treccani

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