ルガルザゲシ

ルガルザゲシ：古代シュメールの王、領域国家の先駆け

ルガルザゲシは、古代メソポタミア、シュメールの王であり、シュメール王名表によればウルク第3王朝のただ一人の王として記録されています。彼の時代は、都市国家の枠を超えた領域国家成立の萌芽が見られた非常に重要な時期であり、その事績は古代メソポタミア史において特筆されます。

生涯と業績

元来、ルガルザゲシはウンマの王でした。彼は、隣接する都市国家ラガシュの王ウルイニムギナ（ウルカギナ）を倒して征服し、さらにウルクを含むシュメールの主要な都市国家の大半を征服して支配下に置きました。治世の後期には、拠点をウルクに置き、シュメール地方を統治しました。

ルガルザゲシが用いた称号の一つに「国土の王」（シュメール語：Lugal kalam ma ki）があります。この称号は、かつてのウルク王エンシャクシュアンナ時代にも用いられたもので、都市という範囲を超えた領域への王権を示す意味合いがあったと考えられています。

支配領域を巡る議論

ルガルザゲシ自身の碑文には、「日の昇る所から日の没する所まで征服し、下の海（ペルシア湾）から上の海（地中海）まで道を切り開いた」と記されています。しかし、彼が実際にペルシア湾から地中海に至る広大な領域を支配したのかどうかについては、議論が分かれています。

もしこの記述が事実であれば、後にルガルザゲシを破ったアッカド王サルゴンは、彼に対する反乱を起こして成功したことになり、サルゴンの元主君であったウル・ザババなどはルガルザゲシの属王であったことになります。しかし、この碑文は単なる誇張であり、ルガルザゲシが支配したのはシュメール、すなわち南部メソポタミアに過ぎず、北部に成立したアッカドによって征服されたとする説も有力です。

サルゴンとの戦いと最期

史実がどうであったにせよ、最終的にルガルザゲシはアッカド王サルゴンとの戦いに敗れ、彼の支配した領域はアッカドの支配下となりました。サルゴンの記録によれば、ルガルザゲシは生きたまま捕らえられ、首に鎖を繋がれてエンリルの門（ニップル市の神殿）に連れて行かれたとされています。興味深いことに、ルガルザゲシが用いた称号や、「下の海から上の海まで」というフレーズは、彼を倒したサルゴンによって踏襲されました。

ルガルザゲシの治世は短期間で終わりましたが、その後のメソポタミアの歴史に大きな影響を与えました。彼の登場は、都市国家から領域国家へと移行する時代の先駆けであり、彼の試みは、後にアッカド帝国を築き上げるサルゴンによって引き継がれることになります。彼の業績は、古代メソポタミア史を理解する上で欠かせない要素と言えるでしょう。

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