ルクソール県

概要

ルクソール県（アラビア語: محافظة الأقصر）は、北アフリカに位置するエジプト・アラブ共和国の中央部に所在する行政区分の一つ、ムハーファザ（県）です。この県の県庁所在地は、その名の通り古代エジプトの主要都市テーベがあった場所に位置するルクソール市に置かれています。エジプトの首都であるカイロからは、およそ635キロメートル南方に位置しており、国内でも特に重要な歴史的・文化的な地域として知られています。

地理と隣接地域

ルクソール県の地形的な特徴としては、県域の中央部を南北に雄大なナイル川が貫流している点が挙げられます。この大河は古代からこの地域の生命線であり、豊かな緑地帯を形成するとともに、重要な交通路としても機能してきました。ナイル川の存在は、この地に古代文明が栄える上で不可欠な要素でした。

ルクソール県は複数の隣接する県に囲まれています。具体的には、北にはケナ県が、東には紅海沿岸に広がる紅海県が、南にはアスワン県が位置しています。また、広大な砂漠地帯に位置するワーディー・ゲディード県とも境界を接しています。これらの隣接県との関係性は、地域全体の地理的、経済的な連携において重要です。

歴史と文化遺産

ルクソール県は、古代エジプト新王国時代（紀元前16世紀～紀元前11世紀頃）の首都テーベが存在した地域であり、そのため数多くの壮大な遺跡が現在も残されています。これらの遺跡は、古代エジプトの宗教、政治、日常生活を知る上で非常に貴重な資料であり、その多くがユネスコの世界遺産にも登録されています。

県内には、国内外から年間を通じて多くの観光客が訪れる主要な観光スポットが点在しています。

王家の谷: ナイル川西岸の砂漠の丘陵地帯に位置し、新王国時代のファラオたちの岩窟墓が集中する地域です。ツタンカーメン王の墓など、多くの重要な墓が発見されており、古代エジプトの葬送文化や美術を知る上で欠かせない場所です。

王妃の谷: 王家の谷と同様に西岸に位置し、主に新王国時代の王妃や王子、高官などが埋葬された場所です。ネフェルタリ王妃の墓などが有名です。

カルナック神殿: ナイル川東岸に広がる古代エジプト最大の神殿複合体です。アメン神を中心に、数多くの神殿や建造物が長い年月をかけて増改築され、その壮大なスケールは訪れる者を圧倒します。

ルクソール神殿: カルナック神殿の南に位置し、主にアメンホテプ3世とラムセス2世によって建設された美しい神殿です。夜間のライトアップは特に有名で、古代の雰囲気を一層引き立てます。

ナイル川: 単なる地理的な要素だけでなく、クルーズ船による観光も盛んで、ルクソールとアスワンを結ぶ人気の観光ルートとなっています。川からの眺めは、両岸の遺跡や人々の暮らしを垣間見ることができ、独特の魅力があります。

ルクソール博物館: ルクソール市内にある博物館で、古代テーベ周辺で発見された優れた収蔵品を展示しています。特に、人間の像やスフィンクスなど、質が高く保存状態の良い彫像が多く見られます。

* ミイラ博物館: ナイル川東岸に位置し、古代エジプトのミイラとその関連品に特化した博物館です。ミイラ作りの技術や、当時の埋葬習慣について学ぶことができます。

これらの遺跡や博物館の他にも、この地域にはアルマント（古代のヘルモンティス）やエスナといった古代からの歴史を持つ町が存在し、それぞれに興味深い遺跡や文化遺産が残されています。

結び

ルクソール県は、古代エジプト文明の栄華を今に伝える生きた博物館とも言える場所です。ナイル川の恵みを受けながら発展してきたこの地域は、その豊かな歴史と文化遺産を通じて、世界中の人々に古代への扉を開き続けています。観光だけでなく、古代エジプト研究においても極めて重要な地域であり、その価値は計り知れません。

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