ルグラン (電気機器メーカー)

ルグラン：磁器工房からグローバル企業へ

ルグラン社は、1865年、フランスのリモージュで磁器工房として創業されました。当初は磁器の製造が中心でしたが、1904年、フレデリック・ルグラン氏が工房を引き継ぎ、社名を現在の「ルグラン」に変更。その後、電気絶縁体としての磁器の特性に着目し、電気スイッチの製造を開始しました。この転換が、ルグラン社の将来を大きく変える転機となりました。

1919年には、職人のジャン・モンドット氏と提携し、磁器を用いた電気スイッチの量産体制を確立。徐々に事業の中心を電気分野へと移行していきました。しかし、1949年には工場火災という大きな危機に見舞われます。この出来事を機に、ルグラン社は事業をスイッチやソケットなどの電気配線器具に特化し、ヒューズホルダーやブレーカー、ケーブルマネジメント製品の製造を拡大していきました。

積極的な海外展開もルグラン社の成長を支えました。1966年にはベルギーに最初の海外拠点を設立し、1970年にはパリ証券取引所に上場を果たしました。その後も、ブラジル、アメリカ合衆国など世界各国に進出し、多くの企業買収を通じて事業規模を拡大していきました。

特に注目すべきは、1989年のイタリアの大手電気機器メーカーBticino社の買収です。この買収により、ルグラン社はヨーロッパ市場における地位を確固たるものとしました。さらに、アメリカやオーストラリアの有力企業の買収も続け、グローバル企業としての基盤を築きました。中国やオーストラリアの主要企業買収も行っており、世界的な規模へと成長しました。

2001年には、シュナイダーエレクトリック社と株式持ち合い関係を形成しましたが、欧州委員会から競争阻害行為として阻止されました。その後、フランスの投資会社やアメリカの投資会社の資本が入りましたが、2009年の世界経済危機の影響を受け、両社はルグラン社の株式を売却しました。この危機を乗り越え、2010年代に入ると業績は回復。同年には、シュナイダーエレクトリック社と電気自動車充電プラグの規格に関する協定を結び、欧州標準規格としての地位を確立しました。

近年は、IoT分野への進出も積極的に行っています。2015年には「Eliot Program」を発表し、スマートホームやスマートビルディング関連の製品開発を推進しています。また、北米市場においては、データセンター向けソリューションを提供するラリタン社を買収し、事業領域を拡大しました。ラリタン社の日本法人であるラリタン・ジャパン株式会社は、現在も独自のブランドで事業を展開しています。

ルグラン社は、磁器工房からスタートし、150年以上にわたる歴史の中で、数々の困難を乗り越え、世界をリードする電気機器メーカーへと成長しました。その歴史は、技術革新と積極的な経営戦略、そして時代を捉えた事業展開の賜物と言えるでしょう。現在も、世界90か国以上に拠点を持ち、革新的な製品とソリューションを提供し続けています。今後、IoTやサステナビリティといった分野でも、更なる展開が期待されています。

ルグラン社の歴史は、企業の成長と変革、そしてグローバル化のダイナミズムを示す優れた事例として、今後も注目を集めるでしょう。

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