ルスラン・チャガエフ

ルスラン・チャガエフ：栄光と苦難のヘビー級ボクサー

ルスラン・チャガエフ（Ruslan Chagaev）は、1978年10月19日生まれ、ウズベキスタン・アンディジャン出身の元プロボクサーです。元WBA世界ヘビー級王者であり、「ホワイト・タイソン」の愛称で知られています。アマチュア時代から優れた実績を残しましたが、プロ転向後は肝炎との闘いなど、数々の困難に見舞われました。

アマチュア時代の輝かしい実績

チャガエフは、旧共産圏というプロボクシングの土壌が未発達な環境で育ちました。そのため、若年期はアマチュアボクシングに打ち込み、85戦82勝という素晴らしい戦績を収めました。1997年には世界選手権で優勝し金メダルを獲得しましたが、プロ経験が発覚したため剥奪されるという苦い経験もしています。

アマチュア時代には、世界選手権で2度優勝、オリンピックにも2度出場しました。特に、オリンピック3連覇を達成したキューバの英雄、フェリックス・サボンに2度勝利したことは特筆に値します。1997年の世界選手権決勝では14-4、1999年のインターナショナル・ボクシング・カップ決勝では7-2で勝利しています。

主な戦績は以下の通りです。

1995年：アジア選手権ヘビー級 - 金メダル
1996年：アトランタオリンピック出場 - 初戦敗退
1996年：世界ジュニア選手権ヘビー級 - 銅メダル
1997年：世界選手権ヘビー級 - 金メダル（剥奪）
1998年：アジア大会ヘビー級 - 金メダル
1999年：アジア選手権ヘビー級 - 金メダル
2000年：シドニーオリンピック出場 - 2回戦敗退
2001年：世界選手権スーパーヘビー級 - 金メダル

プロボクサーとしての挑戦

チャガエフは1997年にアメリカでプロデビューを果たしますが、アマチュア活動との両立が問題となり、一時プロ活動を自粛します。2001年に改めてプロボクサーとして再出発し、ドイツを拠点に活動を始めました。

2006年にはWBAインターコンチネンタルヘビー級王座、WBOインターコンチネンタルヘビー級王座、WBOアジア太平洋ヘビー級王座を獲得し、世界挑戦への足がかりとしました。同年11月には、WBA世界ヘビー級挑戦者決定戦でジョン・ルイスに勝利し、ニコライ・ワルーエフへの挑戦権を獲得しました。

2007年4月、ロストックで行われたWBA世界ヘビー級タイトルマッチで、王者ニコライ・ワルーエフに判定勝ちし、見事王座を奪取しました。身長差約30cm、体重差約42kgという体格差を乗り越えての勝利は、多くのファンを魅了しました。

苦難との闘い

しかし、王座獲得後、チャガエフは度重なる苦難に見舞われます。2007年10月には、スルタン・イブラギモフとの王座統一戦がB型肝炎の発覚により中止となりました。その後も、アキレス腱断裂などの怪我、肝炎の再発などにより、試合が延期や中止となることがありました。

2009年6月には、ウラジミール・クリチコにTKO負けを喫し、王座統一に失敗。2011年には、アレクサンデル・ポベトキンとのWBA世界ヘビー級レギュラー王座決定戦にも敗れ、王座返り咲きはなりませんでした。

2014年7月には、フェリス・オケンドに勝利しWBA世界ヘビー級レギュラー王座に返り咲きましたが、その後、ドーピング問題などにより王座を剥奪されました。

引退

2016年7月、チャガエフは2001年に手術を受けた左目の状態が悪化したことを理由に、現役引退を発表しました。数々の栄光と苦難を経験したチャガエフは、多くのボクシングファンに記憶されることでしょう。

獲得タイトル

WBOアジアパシフィックヘビー級王座
WBOインターコンチネンタルヘビー級王座
WBAインターコンチネンタルヘビー級王座
WBA世界ヘビー級王座
WBA世界ヘビー級休養王座
PABAヘビー級王座
WBAコンチネンタルヘビー級王座
WBA世界ヘビー級レギュラー王座

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