ルチアーノ・ヴィンチェンツォーニ

イタリア映画界に多大な足跡を残した脚本家、ルチアーノ・ヴィンチェンツォーニは、1926年3月7日にヴェネト州トレヴィーゾ県で誕生しました。87年に及ぶ生涯で、彼は70本を超える映画の脚本を手がけ、その多くがイタリア国内外で高く評価されています。特にセルジオ・レオーネ監督によるマカロニ・ウェスタンの金字塔や、ピエトロ・ジェルミ監督のコメディ作品における貢献は特筆すべきものでしょう。

ヴィンチェンツォーニの映画界でのキャリアは、意外にも脚本家としてではなく、1951年に公開されたマリオ・セクィ監督作で製作主任を務めたことに始まります。しかし、すぐに脚本執筆へと活動の中心を移し、1954年の『奴らは路面電車を盗んだ』で原案を担当しました。興味深いことに、この作品には後に伝説的な監督となるセルジオ・レオーネがノンクレジットで演出に関わっており、二人の長きにわたる協業はキャリアの初期から育まれていたのです。

ピエトロ・ジェルミ監督との仕事もヴィンチェンツォーニの重要な功績の一つです。1956年の『鉄道員』のような名作の脚本・原案に参加した後、ジェルミ監督と共にイタリア式コメディの傑作を生み出しました。特に1965年の『誘惑されて棄てられて』と1967年の『蜜がいっぱい』では、共同執筆者であるジェルミ監督自身とアージェ＝スカルペッリと共に、イタリア映画界の権威ある賞であるナストロ・ダルジェント最優秀脚本賞を二度にわたって受賞しています。これらの作品における人間味あふれるドラマと鋭い社会批評は、彼の筆致から生まれたものです。

しかし、ヴィンチェンツォーニの名前を世界に知らしめたのは、やはりセルジオ・レオーネ監督とのマカロニ・ウェスタン作品でしょう。1965年に公開された『夕陽のガンマン』、そして翌年の『続・夕陽のガンマン/地獄の決斗』において、彼はレオーネ監督の壮大なビジョンを具現化するための脚本を執筆しました。クリント・イーストウッド、リー・ヴァン・クリーフ、イーライ・ウォラックといった個性的なキャラクターたちの魅力的なやり取りや、練り上げられたプロットは、これらの作品を単なるB級映画に終わらせず、世界的な成功へと導く上で不可欠な要素でした。その後も、レオーネ監督の『夕陽のギャングたち』など、いくつかの作品で協力関係を続けました。

ヴィンチェンツォーニの脚本家としての才能は、ウェスタンやコメディに留まらず、多岐にわたるジャンルで発揮されました。カルロ・リッツァーニ監督の『汚れた英雄』や『ローマ・ベーネ』のような社会派、テレンス・ヤング監督の『残虐の掟』のようなアクション、さらにはルッジェーロ・デオダート監督の『サバイバル・ショット/恐怖からの脱出』のようなホラー要素を含む作品まで、その守備範囲は広大です。また、マイケル・アンダーソン監督の『オルカ』や、アーノルド・シュワルツェネッガー主演のハリウッド映画『アーノルド・シュワルツェネッガー/ゴリラ』の脚本・原案を手がけるなど、国際的なプロジェクトにも積極的に関わりました。70本を超える脚本数という数字は、彼の驚異的な創作意欲と、様々なタイプの映画に対応できる柔軟な才能を物語っています。

長年にわたる映画界への貢献は高く評価され、1996年には、エンニオ・フライアーノの名前を冠したイタリアの重要な映画祭であるフライアーノ映画祭において、永年功労賞が授与されました。晩年も精力的に活動を続け、ジュゼッペ・トルナトーレ監督の話題作『マレーナ』（2000年）でも脚本・原案を担当するなど、キャリアの最後まで第一線で活躍しました。

ルチアーノ・ヴィンチェンツォーニは、2013年9月22日、87歳でこの世を去りました。彼の遺した膨大なフィルモグラフィは、イタリア映画の多様性と国際的な影響力を示す貴重な財産であり、特にマカロニ・ウェスタンの隆盛に貢献した脚本家として、その名前は映画史に深く刻まれています。

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