カルロ・リッツァーニ

カルロ・リッツァーニ：イタリア映画史に刻まれた多才な巨匠

カルロ・リッツァーニ (1922年 - 2013年) は、イタリア映画界を代表する監督、脚本家、そして批評家でした。第二次世界大戦前のローマで生まれ育った彼は、若くして脚本家としてのキャリアをスタートさせます。ロベルト・ロッセリーニ監督の『ドイツ零年』(1948年) やアルベルト・ラットゥアーダ監督の『ポー河の水車小屋』(1948年)、ジュゼッペ・デ・サンティス監督の『にがい米』(1949年) といった、イタリア映画史に残る名作の脚本に携わったことは、彼の才能の片鱗を示しています。『にがい米』は第23回アカデミー賞で原案賞にノミネートされ、国際的な評価も得ました。

脚本家としての成功を経て、リッツァーニは1951年、第二次世界大戦を背景にしたドラマ『Achtung! Banditi!』(邦題：『注意！バンディッツ！』)で監督デビューを果たします。その後も精力的に作品を制作し、1954年の『Cronache di poveri amanti』(邦題：『貧しき恋人たちの年代記』)は第7回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、高い評価を獲得しました。

リッツァーニ監督は多様なジャンルに挑み、その才能を発揮しました。ネオレアリズモの影響を受けた初期作品から、クライム映画、犯罪コメディへと活動の幅を広げ、『ミラノの銀行強盗』(1968年) や『マンハッタン皆殺し作戦』(1974年)、『Roma bene』(1971年) といったヒット作を世に送り出しました。これらの作品で彼は、スリリングな展開と緻密な演出で高い評価を得て、ジャンル映画、特にクライム映画の名手としての地位を確立しました。また、『L'oro di Roma』(邦題：『ローマの黄金』)(1961年) では、ローマのユダヤ人に対する迫害を描写し、歴史的な重みに満ちた作品を発表しました。

監督業のみならず、リッツァーニは脚本家としても活躍し続けました。代表作のひとつである『オリーヴの下に平和はない』(Non c'è pace tra gli ulivi)の脚本にも参加しています。また、イタリアのテレビ業界にも積極的に参加し、1979年から1982年にかけては4度にわたってヴェネツィア国際[[映画祭]]の監督を務めました。1994年には第44回ベルリン国際映画祭の審査員を務めるなど、国際的な舞台でもその活躍は目覚ましいものでした。

さらに、リッツァーニは映画評論家としても活躍し、1950年代以降、数多くの映画に関する著作を発表しました。これらの著作は、彼の深い映画への造詣と、鋭い批評眼を示すものとなっています。1996年にはイタリア共和国功労勲章グランデ・ウッフィチャーレを受章、2002年にはカヴァリエーレ・ディ・グラン・クローチェを受章するなど、イタリア政府からもその功績が認められました。

1996年の作品『Celluloide』(邦題：『セルロイド』)は、ロベルト・ロッセリーニ監督の名作『無防備都市』の製作過程を描いたもので、この作品で彼はダヴィッド・ディ・ドナテッロ脚本賞を受賞しました。晩年はテレビ映画の制作にも携わり、精力的に活動を続けました。

しかしながら、2013年10月5日、91歳の誕生日を迎えた直後、ローマの自宅マンションのバルコニーから身を投げ、自殺しました。晩年は、自身の健康問題や妻の病気など、様々な苦悩を抱えていたと報じられています。

彼の死は、イタリア映画界に大きな衝撃を与えました。カルロ・リッツァーニは、多様なジャンルにわたる数々の作品を通して、イタリア映画史に大きな足跡を残した、真の巨匠でした。彼の作品は、これからも多くの人々を魅了し続けることでしょう。

主なフィルモグラフィー

監督作品としては、フィクション作品に加え、多くのドキュメンタリーやテレビ映画も制作しています。彼のフィルモグラフィーは、イタリア映画史において重要な位置を占めるものであり、多様なテーマと表現方法を探求する彼の姿勢が見て取れます。特に、ネオレアリズモの伝統を受け継ぎつつ、社会問題や歴史的事件を独自の視点で描いた作品は、高く評価されています。

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