ルドルフ・キルヒシュレーガー

ルドルフ・キルヒシュレーガーは、1915年3月20日にオーバーエスターライヒ州ニーダーカッペルで生まれました。幼少期に孤児となり、苦労を重ねながらも1935年にホルンの高校を優秀な成績で卒業、ウィーン大学で法学を学び始めます。しかし、1938年のアンシュルス（オーストリア併合）により、ナチスへの入党を拒否したため奨学金が打ち切られ、学業を断念せざるを得なくなります。

その後、銀行員として働いていた彼は、1939年夏にドイツ国防軍に召集され、第二次世界大戦中はポーランド侵攻や西部戦線、東部戦線で兵士として戦いました。1940年後半には、法学の国家試験を受けるために2ヶ月間の後方勤務制度を利用し、猛勉強の末に博士号を取得します。しかし、退役は認められず、再び東部戦線に送り返され、1942年に戦傷を負いました。その後は陸軍士官学校で隊長兼訓練官を務め、終戦直前の1945年4月には、ソ連軍と戦う部隊を指揮して重傷を負いました。

戦後、キルヒシュレーガーは1954年まで地方裁判所判事を務めました。その後、外国語を話せないながらも外務省に転じ、オーストリア国家条約の締結交渉に参加するため、独学で英語を習得しました。1967年から1970年には駐チェコ大使としてプラハに派遣され、プラハの春の際にはソ連の弾圧から逃れようとする市民に、本国の訓令に反して出国ビザを発行したことで知られています。1970年から1974年まで外務大臣を務めた後、1974年にオーストリア連邦大統領に選出されました。

大統領としてのキルヒシュレーガーは、「倫理的な外交政策」を提唱し、1974年にはナチス戦犯に恩赦を与えたことが物議を醸しました。しかし、1980年の大統領選挙では80%という驚異的な得票率で再選を果たし、これはオーストリア大統領選挙における最高得票率として現在も記録されています。1984年にはオーストリア大統領として初めてアメリカ合衆国を国賓訪問しました。

1940年8月17日にヘルマ・ソルガーと結婚し、1男1女をもうけました。

2000年3月30日、ウィーン近郊で心臓発作のため85歳で亡くなりました。

キルヒシュレーガーは、その生涯を通じて数々の栄誉を受けました。オーストリア共和国メリット勲章グランド・クロス章をはじめ、イタリア、ナッサウ家、スペイン、デンマーク、ポルトガル、聖座、チェコなど、多くの国から勲章を授与されました。

彼の著書には、『Der Friede beginnt im eigenen Haus. Gedanken über Österreich.』(1980)や『Ethik und Außenpolitik』(1973)などがあり、その思想や政治観を垣間見ることができます。

ルドルフ・キルヒシュレーガーは、その多岐にわたる経験と卓越した才能で、オーストリアの歴史に大きな足跡を残した人物として、今もなお深く記憶されています。

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