ルネット

ルネット（lunette）は、建築用語で壁面に見られる半円形の空間を指します。フランス語で「小さな月」を意味するように、その形状が特徴的です。この空間は、窓として機能することもあれば、装飾的な要素として用いられることもあります。

ルネットは、アーチ構造と密接な関係があります。例えば、アーチを支える柱の上に水平なコーニス（装飾的な帯状の突出部）を渡した場合、そのコーニスとアーチの間に生まれる半円形の空間がルネットです。また、ドアの上部に半円形のアーチを設けた場合、その周囲の壁面や窓もルネットとみなされます。特に、主要な玄関の上部に装飾が施されたルネットは、ティンパヌムと呼ばれることもあります。

建築内部では、ヴォールト（天井のアーチ状構造）と壁面が接する部分に、半円形のルネットがしばしば見られます。ルネットは、建築デザインにおいて重要な役割を果たし、ミケランジェロはシスティーナ礼拝堂のルネットを見て、その形状を「最後の審判」の構図に取り入れたと言われています。この事例からも、ルネットが持つ視覚的な魅力と空間構成における可能性が伺えます。

新古典主義建築の時代には、ロバート・アダムやアンジュ＝ジャック・ガブリエルといった建築家たちが、浅いアーチに窓を設けるデザインを好んで用い、ルネットは窓としても活用されました。半円形のルネットは、放射状のデザインとの相性が良く、装飾的なモチーフが効果的に配置されました。また、アーチが楕円形の場合、ルネットは扁平な形状になりますが、これもルネットと総称されます。

ルネットが窓として用いられる場合、その形状から「弦月窓（half-moon window）」や「扇窓（fanlight）」と呼ばれることもあります。これらの窓は、採光だけでなく、建物の外観に独特の雰囲気をもたらします。

ルネットは、建築における構造と装飾の両面において重要な要素であり、その形状や配置によって、空間の印象を大きく変える力を持っています。歴史的な建造物から現代建築まで、ルネットは様々な形でその存在感を示し続けています。

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