ルノーサムスン・SM7

SM7（エスエムセブン）

SM7は、韓国のルノーサムスン自動車がかつて展開していたフルサイズセダンです。韓国国内では、ヒュンダイ・グレンジャーやキア・K7などと並ぶ「準大型車」セグメントに位置づけられ、ルノーサムスンのフラッグシップモデルとしての役割を担いました。

本モデルの開発は、ルノーグループの一員である日産自動車との技術提携を活用して行われました。特に初代モデルは日産のティアナをベースとしていますが、単なるバッジエンジニアリングにとどまらず、韓国の道路事情やユーザーの嗜好に合わせて内外装が大幅に手直しされています。

製造は一貫して、ルノーサムスンの釜山工場で行われました。また、2代目SM7をベースとした中国市場専売モデルとして「ルノー・タリスマン」が存在します。なお、2015年にルノーが欧州で発表した同名のDセグメント車とは直接的な関連はありません。

歴史

初代 (A34R型、2004年-2011年)

初代SM7は、2004年12月にSM5の上級車種として、ルノーサムスンのフラッグシップを担うべく登場しました。日産のティアナをベースに開発された初代は、同車の持つ高い基本性能やメカニズムを引き継ぎつつ、より高級感と独自の存在感を追求した内外装デザインを採用しました。前後バンパーや大型フロントグリル、ボンネット、専用トランクリッド、LEDリアコンビネーションレンズなど、多くの外装パーツがベースのティアナや下位モデルのSM5とは異なる専用設計となっており、互換性はありませんでした。

パワートレインには、日産いわき工場製のVQ型エンジン、具体的には2.3リッターのNEO VQ23と3.5リッターのNEO VQ35が搭載されました。特にVQ35搭載車には、耐久性とコストを考慮して、ティアナのCVT-M6ではなくジヤトコ製の5速オートマチックトランスミッションが組み合わされています。SM7の投入は、翌年登場する2代目SM5においてV6エンジン搭載グレードが廃止される要因の一つとなりました。

初期の改良として、2006年5月には先進的なテレマティクスシステムを搭載した特別仕様車「SM7 Premiere」が登場し、ナビゲーションや各種情報サービスへの対応を強化しました。同年9月には、NEO VQ23エンジン搭載車のオートマチックトランスミッションが4速から5速に変更され、走行性能と燃費性能の向上が図られました。

2008年1月には、韓国市場のライバル車種に対抗すべく、大規模なマイナーチェンジが実施され、「SM7 New Art」として刷新されました。外観はヘッドライトを含むフロント周り、そしてリアバンパーやリアコンビランプなどが新意匠となり、特にリアバンパーはEUサイズのナンバープレートにも対応するよう変更されました。エンジンは細部の改良により、わずかに性能が向上しています。装備面では、米国BOSE社と共同開発した高音質オーディオシステムや、後方駐車時に助手席側ミラーが自動で下降する機構、サムスン電子開発の室内空気清浄システム「スーパー・プラズマ・イオン（SPI）モジュール」が新たに採用されるなど、SM5とのさらなる差別化と高級感の向上が図られました。

その後も特別仕様車「プレステージ」や「SE PLEASURE」、年次改良を通じて、内外装の変更や装備の充実が続けられましたが、ベースとなったティアナがフルモデルチェンジし、SM5も次世代に移行する中で、初代SM7はマイナーチェンジによる継続生産が続けられました。最終的に、初代モデルは2011年9月に販売を終了しました。

2代目 (L47型、2011年-2019年)

2代目SM7は、2011年8月16日に「All-New SM7」として発表・発売されました。約6年8か月ぶりのフルモデルチェンジにあたり、32ヶ月の期間と4000億ウォン以上の開発費用が投じられています。プラットフォームは、2代目ティアナや3代目SM5と同じ日産・ルノーアライアンスのDプラットフォームを共有しますが、ボディシェルは先代がSM5と共用していたのに対し、2代目ではフラッグシップとしての個性を際立たせるべく専用設計となりました。

ボディサイズは先代よりも一回り拡大され、特にホイールベースが延長されたことで、後席の足元空間が大幅に向上しました。パワートレインは、先代から引き継ぎつつ改良が加えられたVQ25（2.5L）とVQ35（3.5L）の2種類のV6エンジンを搭載し、いずれもジヤトコ製の6速オートマチックトランスミッションと組み合わされました。また、ルノーサムスン車としては初めてパドルシフトが採用されています。国産車としては珍しいデュアルエキゾーストシステムも特徴の一つです。

インテリアは初代と同様に後席重視の思想が貫かれました。航空機のファーストクラスに着想を得たエア内蔵ヘッドレストとマッサージ機能付きシート、後席独立3ゾーンフルオートエアコンなど、後席乗員の快適性を高める装備が充実しました。オーディオシステムも、パナソニック製の8スピーカーシステムに加え、上位グレードにはBOSEと共同開発した12スピーカーのライブサウンドシステムが用意されました。パノラマルーフや高機能ナビゲーションシステム、プレミアムナッパーレザーシートなども設定され、豊富な装備が特徴です。特にオプションの「VIPパッケージ」を選択すると、後席リクライニング機能や多機能センターアームレスト、電動リアサンシェードなど、さらにショーファーカーとしての側面が強化されました。

安全性も重視されており、全車にスマートエアバッグシステムやカーテンシールドエアバッグを装備。ヒルスタートアシスト（HSA）、タイヤ空気圧警報システム（TPMS）、電子式パーキングブレーキ（E-PKB）なども採用されました。

初代モデルは、2代目の登場後も約1ヶ月間併売され、公式サイトでは「All-New SM7」と区別されて表記されました。

2014年9月にはマイナーチェンジが実施され、「SM7 Nova」として発表されました。エクステリアはルノーグループのデザイン言語「サイクル・オブ・ライフ」に基づき、フロントマスクを中心に大幅に変更されました。ボンネット、ヘッドライト、グリル、バンパー、フェンダーに至るまで新造形となり、より力強くモダンな印象となりましたが、ボディサイズに変更はありません。通信システムにおいては、韓国車初となるWi-Fiを活用した「スマートミラーシステム」が導入され、スマートフォンとの連携機能が強化されました。

2015年8月には、SM7としては初めてとなる4気筒エンジン搭載モデルおよびLPG燃料仕様「SM7 LPe」が追加されました。これはSM5と同じ2.0リッターのLPLiシステムを採用し、スペアタイヤスペースに配置される「ドーナツタンク」によってトランク容量を確保しています。その後、2016年2月にはエンブレムの書体がSM6と同じデザインに変更される小改良が行われました。

2代目SM7は、2019年12月にSM6に統合される形で販売を終了し、SM7の歴史に幕を閉じました。

ルノー・タリスマン (中国市場専売、2012年-2016年)

2012年3月、ルノーは2代目SM7をベースとした中国市場専売モデル「タリスマン（TALISMAN）」を発表しました。このモデルは同年4月に開催された北京モーターショーで正式に披露され、ルノーの中国市場における上級車種として位置づけられました。ベースのSM7と同様に2.5リッターと3.5リッターのVQエンジンを搭載し、ルノーサムスンの釜山工場で製造された車両が中国へ輸出されました。外観上のSM7との違いは主にエンブレム類にとどまります。この「タリスマン」という車名は、かつて2001年に発表されたルノーのコンセプトカーで使用されていた名称です。ルノー・タリスマンは、中国市場でのルノーブランドのプレゼンス向上と、ルノーサムスンの輸出実績に貢献しましたが、2016年にモデル廃止となりました。

車名の由来

「SM7」という車名は、ルノーサムスンのモデルラインナップにおける共通の命名規則に基づいています。「S」はルノーサムスン（SAMSUNG）またはセダン（SEDAN）を、「M」はドライブや移動を意味する「Motoring」の頭文字を表します。そして「7」は、その車両の車格、具体的には「準大型車」クラスであることを示しています。これは、SM3（コンパクト）、SM5（ミドル）、SM7（準大型）といった形で、数字が増えるにつれて車格が上がるというルノーサムスンの命名体系に則っています。

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