ルノー・エスパス

ルノー・エスパス：ミニバンからクロスオーバーSUVへの進化

ルノー・エスパスは、フランスの自動車メーカー、ルノーが1984年から製造・販売している乗用車です。ヨーロッパ初のミニバンとして登場し、その革新的なデザインと広い室内空間は瞬く間に人気を博しました。その後、時代に合わせて進化を続け、現在ではクロスオーバーSUVとして販売されています。本稿では、エスパスの歴史、特徴、各世代のモデルについて詳しく解説します。

誕生秘話：欧州クライスラーとマトラの協働

エスパスの開発は、1967年にクライスラーが欧州に進出したことに端を発します。英国デザインセンターのデザイナー、ファーガス・ポロックが最初の設計を行い、その後、シムカ（後のタルボ）との協力の下、プロジェクトP-18として開発が進められました。マトラ・シムカ・ランチョのコンセプトを拡大したもので、当初はタルボブランドでの販売が予定されていました。しかし、クライスラーの経営悪化により、欧州クライスラーはPSAグループに売却され、P-18プロジェクトは一時中止。その後、マトラが所有したP-18のデザインをルノーが取得し、1984年、ヨーロッパ初のモノスペースカーとしてエスパスが誕生しました。マトラは3代目まで開発と生産に協力しましたが、4代目以降はルノー単独での開発・生産となりました。

各世代の特徴

初代エスパス (1984-1991年)

初代エスパスは、ルノー18のコンポーネントを流用し、縦置きFFレイアウトを採用。ボディは、鋼板プレスのスケルトンに樹脂製の外板を張り込む構成で、軽量かつスポーティな走行性能を実現しました。エンジンは直列4気筒ガソリンとディーゼルが用意され、1988年にはマイナーチェンジを実施。フロントマスクのデザインが変更されました。

2代目エスパス (1991-1997年)

初代の大成功を受け、2代目では内外装のリフレッシュに留まり、シャシやドライブトレインは初代を踏襲。ボディサイズは大型化し、室内空間の広さをさらに向上させました。1995年には、ルノーとマトラの提携10周年を記念したショーカー「エスパスF1」が製作され、注目を集めました。

3代目エスパス (1997-2003年)

3代目ではエンジンを横置きに変更。ヨーロッパでの高い人気により、マトラの生産能力では需要を満たせなくなり、マトラ製の樹脂ボディを持つエスパスはこれが最後となりました。荷室を広げた「グラン・エスパス」も設定されました。

4代目エスパス (2003-2014年)

ルノー単独での開発となった4代目。広い室内空間と7人乗りのシートアレンジ、高い安全性（ユーロNCAP5つ星評価）を両立しました。日産製のガソリンエンジンと、いすゞ製のディーゼルエンジンを搭載。複数回のマイナーチェンジを行い、エンジンやデザイン、装備を改良しました。2011年には右ハンドル仕様の生産が中止されました。

5代目エスパス (2015-2023年)

2014年発表の5代目では、ミニバンからクロスオーバーSUVへとスタイルを変更。ルノー・日産の共同開発プラットフォーム「CMF」を採用し、右ハンドル仕様は設定されませんでした。

6代目エスパス (2023年-)

2023年発表の現行モデル。クロスオーバーSUVとして、コレオスを統合。2列/3列シートが用意され、全長は短縮された一方、室内長は拡大、軽量化も図られました。ハイブリッドシステム「E-TECH」を搭載し、高い燃費効率を実現しています。

日本での状況

日本市場では、いずれの世代も正規輸入されていませんが、並行輸入車が存在します。

まとめ

ルノー・エスパスは、ミニバンという新しいカテゴリーを確立し、自動車業界に大きな影響を与えました。時代に合わせて進化を続け、現在ではクロスオーバーSUVとして市場に貢献しています。その革新的なデザインと広い室内空間は、今後も多くのユーザーを魅了し続けるでしょう。

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