ルノー・タリスマン
ルノーのタリスマン（TALISMAN）は、同社がかつて手掛けたコンセプトカーおよび市販乗用車シリーズです。車名は英語の「お守り」に由来します。この名称は、2000年代初頭に発表された革新的なコンセプトモデルと、2015年に市場に投入されたDセグメントの量産モデルの双方に冠されましたが、両者に直接的な技術的関連はありません。
タリスマンの名称が初めて登場したのは2000年、コードネーム「Z12」としてスケッチが公開された時です。翌2001年には、フランクフルトモーターショーで実物大のコンセプトカーとして披露されました。当時のチーフデザイナー、パトリック・ル・ケマン氏の手によるこのモデルは、その先進的なデザインと技術で注目を集めました。
主な特徴として、電動油圧式で自動開閉可能な大型のガルウィングドアが挙げられます。全長2,450mmに及ぶこのドアは、センターピラーのない構造と組み合わせることで、非常に優れた乗降性を実現し、同時にインテリアの斬新さを強調しました。車内のシートは、センタートンネルの両側にそれぞれ2席ずつ、あたかも浮いているかのように配置されました。これらのシートは固定式でしたが、ダッシュボードとペダルが一体となって前後にスライドする機構により、ドライバーは理想的な運転姿勢を簡単に設定できました。また、インテリア中央には、高級時計ブランド、タグ・ホイヤー製のクロックが組み込まれていました。
上記のコンセプトカーとは異なり、市販モデルのタリスマンは、当時の傘下企業であった韓国のルノーサムスン自動車が開発を主導し、ルノーとの共同作業によって生まれました。2015年6月29日、ルノーは新型Dセグメントセダンの車名として「タリスマン」を用いることを公表し、予告キャンペーンを開始しました。正式な発表会は同年7月6日にパリ近郊シャンティイで開催され、ルノーグループのCEO（当時）であるカルロス・ゴーン氏らが登壇しました。続いて、9月17日開幕のフランクフルトモーターショーにて、セダンとワゴンのエステートタイプが初めて一般公開されました。
セダンモデルは2015年12月から、エステートモデルは翌2016年4月から順次販売が始まりました。エステートモデルは、販売される国によって名称が異なる場合があり、例えばフランスやオランダではEstate、イタリアではSporter、ドイツやスウェーデンではGrandtour、スペインではSPORT TOURERといった呼称が用いられました。生産は主にフランスのドゥエー工場で行われました。世界的にセダン市場が縮小傾向にあったことや、エスパスなどの他モデルと同様の事情から、タリスマンには右ハンドル仕様の生産計画は立てられませんでした。このため、イギリス、オーストラリア、日本といった右ハンドル圏への正規導入は極めて低い可能性にとどまりました。これらの市場では、メガーヌIVのセダンモデルが、かつてのラティテュードやフルエンスの統合後継車種として位置づけられることとなりました。
車両のプラットフォームには、ルノー・日産アライアンス（現ルノー・日産・三菱アライアンス）が開発したCMF-C/Dが採用されました。セダンモデルは、広い荷室空間が特徴で、トランク容量は608リットルを確保。さらに、60:40の分割可倒式リアシートを備えることで、長尺物の積載にも対応可能でした。
エンジンは複数の選択肢が用意されました。ガソリンエンジンとしては、日産が主導して開発した「M5M」（日産のMR16DDT型に近い）と呼ばれる1.6リッター直噴ターボエンジンがあり、出力の違いによって「TCe 150」と「TCe 200」の2タイプが設定されました。ディーゼルエンジンはルノーが開発したユニットで、1.5リッターの「K9K」（dCi 110、dCi 130）と1.6リッターの「R9M」（dCi 160）の2種類が存在しました。過去のラグナやラティテュードに設定されていたV型6気筒エンジンは、タリスマンでは採用されませんでした。
トランスミッションの組み合わせはエンジンによって異なり、M5Mエンジンには7速EDC（エフィシエントデュアルクラッチ）のみが組み合わされました。ディーゼルエンジンのうち、dCi 110とdCi 130には6速MTまたは6速EDCが、dCi 160には6速EDCのみが設定されました。EDCは全てドイツのゲトラグ社製でした。
インパネには、ルノーのインフォテインメントシステム「R-Link 2」が搭載されました。これは7インチまたは8.7インチのタッチスクリーンを備え、専用のアプリストアから様々なアプリケーションを追加できる機能を持ちました。
2016年1月13日、ルノーサムスン自動車（現ルノーコリア自動車）は、タリスマンのリバッジモデルとして「SM6」を発表しました。SM6はフランスのドゥエー工場ではなく、韓国・釜山の工場で生産され、同年3月から韓国市場で販売を開始しました。SM6のエンジンラインナップは、タリスマンと共通のM5M型1.6リッターGDIターボに加え、タリスマンには設定のないM4R型2.0リッターGDiガソリンおよび同2.0リッターLPLi（LPガス仕様）の合計3種類が用意されました。ディーゼルエンジンについては、SM6では1.5リッターのみの設定でした。また、SM6のボディタイプはセダンのみでした。興味深いことに、SM6の登場後も、旧モデルにあたるラティテュード（新興国向け）およびその兄弟車であるSM5はすぐには廃止されず、2019年まで引き続き生産・販売されました。
タリスマンの市販モデルは、世界的なセダン需要の低迷などの要因から販売が振るわず、ルノーグループの車種整理計画の一環として、2022年に生産および販売が終了しました。ただし、兄弟モデルである韓国市場向けのSM6は、その後も引き続き生産・販売されています。
コンセプトモデルの登場
タリスマンの名称が初めて登場したのは2000年、コードネーム「Z12」としてスケッチが公開された時です。翌2001年には、フランクフルトモーターショーで実物大のコンセプトカーとして披露されました。当時のチーフデザイナー、パトリック・ル・ケマン氏の手によるこのモデルは、その先進的なデザインと技術で注目を集めました。
主な特徴として、電動油圧式で自動開閉可能な大型のガルウィングドアが挙げられます。全長2,450mmに及ぶこのドアは、センターピラーのない構造と組み合わせることで、非常に優れた乗降性を実現し、同時にインテリアの斬新さを強調しました。車内のシートは、センタートンネルの両側にそれぞれ2席ずつ、あたかも浮いているかのように配置されました。これらのシートは固定式でしたが、ダッシュボードとペダルが一体となって前後にスライドする機構により、ドライバーは理想的な運転姿勢を簡単に設定できました。また、インテリア中央には、高級時計ブランド、タグ・ホイヤー製のクロックが組み込まれていました。
市販モデルの開発と発表
上記のコンセプトカーとは異なり、市販モデルのタリスマンは、当時の傘下企業であった韓国のルノーサムスン自動車が開発を主導し、ルノーとの共同作業によって生まれました。2015年6月29日、ルノーは新型Dセグメントセダンの車名として「タリスマン」を用いることを公表し、予告キャンペーンを開始しました。正式な発表会は同年7月6日にパリ近郊シャンティイで開催され、ルノーグループのCEO（当時）であるカルロス・ゴーン氏らが登壇しました。続いて、9月17日開幕のフランクフルトモーターショーにて、セダンとワゴンのエステートタイプが初めて一般公開されました。
セダンモデルは2015年12月から、エステートモデルは翌2016年4月から順次販売が始まりました。エステートモデルは、販売される国によって名称が異なる場合があり、例えばフランスやオランダではEstate、イタリアではSporter、ドイツやスウェーデンではGrandtour、スペインではSPORT TOURERといった呼称が用いられました。生産は主にフランスのドゥエー工場で行われました。世界的にセダン市場が縮小傾向にあったことや、エスパスなどの他モデルと同様の事情から、タリスマンには右ハンドル仕様の生産計画は立てられませんでした。このため、イギリス、オーストラリア、日本といった右ハンドル圏への正規導入は極めて低い可能性にとどまりました。これらの市場では、メガーヌIVのセダンモデルが、かつてのラティテュードやフルエンスの統合後継車種として位置づけられることとなりました。
車両のプラットフォームには、ルノー・日産アライアンス（現ルノー・日産・三菱アライアンス）が開発したCMF-C/Dが採用されました。セダンモデルは、広い荷室空間が特徴で、トランク容量は608リットルを確保。さらに、60:40の分割可倒式リアシートを備えることで、長尺物の積載にも対応可能でした。
エンジンは複数の選択肢が用意されました。ガソリンエンジンとしては、日産が主導して開発した「M5M」（日産のMR16DDT型に近い）と呼ばれる1.6リッター直噴ターボエンジンがあり、出力の違いによって「TCe 150」と「TCe 200」の2タイプが設定されました。ディーゼルエンジンはルノーが開発したユニットで、1.5リッターの「K9K」（dCi 110、dCi 130）と1.6リッターの「R9M」（dCi 160）の2種類が存在しました。過去のラグナやラティテュードに設定されていたV型6気筒エンジンは、タリスマンでは採用されませんでした。
トランスミッションの組み合わせはエンジンによって異なり、M5Mエンジンには7速EDC（エフィシエントデュアルクラッチ）のみが組み合わされました。ディーゼルエンジンのうち、dCi 110とdCi 130には6速MTまたは6速EDCが、dCi 160には6速EDCのみが設定されました。EDCは全てドイツのゲトラグ社製でした。
インパネには、ルノーのインフォテインメントシステム「R-Link 2」が搭載されました。これは7インチまたは8.7インチのタッチスクリーンを備え、専用のアプリストアから様々なアプリケーションを追加できる機能を持ちました。
兄弟車SM6
2016年1月13日、ルノーサムスン自動車（現ルノーコリア自動車）は、タリスマンのリバッジモデルとして「SM6」を発表しました。SM6はフランスのドゥエー工場ではなく、韓国・釜山の工場で生産され、同年3月から韓国市場で販売を開始しました。SM6のエンジンラインナップは、タリスマンと共通のM5M型1.6リッターGDIターボに加え、タリスマンには設定のないM4R型2.0リッターGDiガソリンおよび同2.0リッターLPLi（LPガス仕様）の合計3種類が用意されました。ディーゼルエンジンについては、SM6では1.5リッターのみの設定でした。また、SM6のボディタイプはセダンのみでした。興味深いことに、SM6の登場後も、旧モデルにあたるラティテュード（新興国向け）およびその兄弟車であるSM5はすぐには廃止されず、2019年まで引き続き生産・販売されました。
販売終了
タリスマンの市販モデルは、世界的なセダン需要の低迷などの要因から販売が振るわず、ルノーグループの車種整理計画の一環として、2022年に生産および販売が終了しました。ただし、兄弟モデルである韓国市場向けのSM6は、その後も引き続き生産・販売されています。
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