ルノー・パルス

ルノー・パルスは、フランスの自動車メーカーであるルノーが、インド市場向けに特別に投入したコンパクトカーです。アライアンスパートナーである日産自動車との連携のもと開発され、具体的には日産マーチの4代目モデル（K13型）を設計の基盤としています。インド国内の工場で生産され、専ら同国市場で流通したモデルです。

開発と生産の背景

車両のプラットフォームには、日産が開発したVプラットフォームが採用されました。エクステリアのデザインワークは、インドのマハラシュトラ州ムンバイにあるルノーデザインセンターが担当しています。生産は、インド南部のタミル・ナードゥ州チェンナイ近郊に位置する、ルノーと日産の合弁会社によって運営される工場で行われました。このパルスは、セダンのフルエンスやSUVのコレオスに続き、インド市場におけるルノーのラインナップを拡充するために導入されたモデルの一つでした。

発売と展開

パルスの概要は2011年10月29日に初めて公表され、その後、2012年1月6日に正式な発売が開始されました。発売当初は限定的なエンジンおよびグレードの選択肢での提供となりました。カスタマイズオプションとして、エアロダイナミックパーツや専用デザインのアルミホイール、ボディに貼るデカール、さらにはルノースポールのエンブレムを含む「RSキット」が用意されており、車両にスポーティーな個性を加えることが可能でした。

パワートレイン

初期に設定されたエンジンは、最高出力64PSを発揮する1.5リッターのSOHC8バルブ直列4気筒ディーゼルエンジン（K9K型、通称dCi）のみでした。ガソリンエンジンは当初ラインナップに含まれていませんでしたが、後に最高出力76PSの1.2リッターDOHC12バルブ直列3気筒ガソリンエンジン（XH5型、日産における呼称はHR12DE）が追加導入され、ディーゼルとガソリンの両方の選択肢が提供されるようになりました。しかし、トランスミッションに関しては、どちらのエンジン仕様でも5速マニュアルトランスミッション（5MT）のみが用意され、オートマチックトランスミッションやCVTの設定はありませんでした。

グレード構成と主要装備

パルスのグレード体系は3種類で構成されていました。「RxL」と「RxZ」に加え、ガソリンエンジンモデル専用の廉価グレードとして「RxE」が設定されました。「RxE」は、基準となる「RxL」と比較して、パワーウインドウ、リモコンドアロック、ホイールカバーといった一部の快適装備が省かれていました。一方、最上級グレードの「RxZ」では、「RxL」の装備に加えて、15インチのアルミホイール、スマートアクセスキーシステム、エンジンのプッシュスタートボタン、本革で巻かれたステアリングホイール、ルーフスポイラーなど、充実した装備が標準で備わっていました。安全装備では、全グレードに運転席側エアバッグが標準で搭載されていましたが、助手席側エアバッグは「RxZ」グレードのみが標準装備で、その他のグレードではオプションでの選択が必要でした。

販売状況と生産終了

発売後のパルスの販売は、インド市場での期待に沿えず、継続的な販売不振に悩まされました。その影響で、2015年には一時的に車両の生産が中断される事態に至りました。その後も需要の回復は見られず、低迷が続いた結果、最終的に2017年10月には既に生産活動が終了していたことが明らかになりました。パルスの直接的な後継モデルという位置づけではありませんが、よりコンパクトでエントリー価格帯のモデルとしてルノー・クウィッドが事実上の後を引き継ぐ形となっています。