ルノー・フルエンスZ.E.

ルノー フルエンス Z.E.：低価格と航続距離の両立を目指した電気自動車

ルノー フルエンス Z.E. は、フランスの自動車メーカー、ルノーが2010年に発売した電気自動車です。既存のフルエンスをベースに開発され、環境に配慮したゼロエミッション（Zero Emission）を車名にも冠するモデルとして注目を集めました。本稿では、フルエンス Z.E. の開発背景、性能、販売戦略、そしてその歴史について詳細に解説します。

低価格戦略と電池リース方式

フルエンス Z.E. の大きな特徴は、当時発売されていた日産リーフや三菱i-MiEVといった競合他社の電気自動車と比較して、大幅に低い価格設定だったことです。これは、バッテリーをリース方式とすることで実現されました。車両本体価格を抑えることで、より多くの消費者が電気自動車を購入できる環境を作ることを目指した戦略といえます。具体的には、2010年の発売時の価格は21,300ユーロと発表されており、これは競合他社の3万ユーロ台前半と比較して非常に安価でした。

性能と航続距離

フルエンス Z.E. は、22kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載し、最大航続距離160kmを実現しました。最高速度は135km/hと、当時の電気自動車としては十分な性能を誇っていました。バッテリーは後部座席後方に搭載され、その分車体全長が通常モデルより130mm延長されています。充電時間は、家庭用コンセント（10A/16A 220V）使用時は6～8時間、オプションの急速充電器（32A 400V）使用時は約30分と、充電環境によって大きく変動しました。

バッテリー交換システム「QuickDrop」

フルエンス Z.E. は、バッテリー交換システム「QuickDrop」にも対応していました。これは、専用の交換設備を用いて、放電したバッテリーを充電済みのバッテリーと交換することで、充電時間を大幅に短縮するシステムです。バッテリー交換にかかる時間は約5分と、充電時間と比較して圧倒的に短いため、充電インフラの整備が不十分な地域でも、利便性を高める効果がありました。ベタープレイス社も、フルエンス Z.E. が同社のバッテリー交換ネットワークに対応する最初の電気自動車として注目していました。

モーターとその他の仕様

フルエンス Z.E. に搭載されたモーターは、最高出力70kW（11,000rpm）、最大トルク226N・mのローターコイル式同期電動機で、重量は160kgでした。一方、リチウムイオンバッテリーは250kgと、電動車の重量増に大きく貢献しています。

販売と生産終了

2010年4月に先行予約を開始したフルエンス Z.E. は、2011年にはイスラエル、デンマーク、ヨーロッパの一部地域で発売されました。その後、2012年にはシンガポールとフランスでも販売が開始されました。しかし、2013年末にはトルコでの生産が中止され、兄弟車であるルノーサムスン SM3 Z.E. は2020年まで生産が続けられました。

まとめ：電気自動車普及への貢献

ルノー フルエンス Z.E. は、電池リース方式による低価格戦略と、QuickDropシステムによる充電時間短縮という、革新的な試みによって電気自動車の普及に貢献したモデルです。航続距離や充電時間などの課題は残るものの、その先進性と販売戦略は、後の電気自動車開発に大きな影響を与えたと言えるでしょう。また、兄弟車であるSM3 Z.E. との比較を通して、異なる市場における電気自動車の展開戦略を考える上でも重要なモデルケースとなっています。

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