ルノー・8

ルノー8：フランスが生んだ名車

ルノー8（Renault 8、略称R8）は、フランスの自動車メーカー、ルノー社が1962年から1971年にかけて製造販売したセダンです。フランス語で「8」は「ユイット（huit）」と発音されます。4CVやドーフィンを受け継ぐリアエンジン方式を採用しながらも、当時としては画期的な技術と装備を多数搭載したモデルとして知られています。

贅沢な機構とスタイリッシュなデザイン

ルノー8は、スムーズな動作が特徴の5ベアリングエンジンや、このクラスでは初となる4輪ディスクブレーキなどを装備していました。これは、当時の1リッタークラスの車としては非常に贅沢な仕様と言えるでしょう。ボディデザインは、アルファロメオが1960年に発表したティーポ103プロトタイプと類似しており、1950～60年代にルノーとアルファロメオが業務提携していたことがその背景にあります。搭載された直列4気筒956ccエンジンは、44ps(32kW)の最高出力を発揮しました。

バリエーションモデルの展開

1963年には、オーストラリア・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞。その後、1964年には排気量1108ccのよりパワフルなエンジンを搭載した「8 マジョール (R1132)」が登場。さらに同年、モータースポーツ向けの「8 ゴルディーニ 1100 (R1134)」も追加されました。ゴルディーニモデルは、ベースモデルの約2倍に当たる95psを発生する高性能エンジンと、ブルーにホワイトストライプのボディカラーが特徴でした。

1965年には、ボディを延長してトランク容量を拡大し、装備を充実させた上級モデル「R10」を発表。同年、ジャガー製の3速オートマチックトランスミッションを搭載したモデルも追加されました。このオートマチックトランスミッションは、ダッシュボードに設置されたプッシュボタンで操作するタイプで、ドーフィンにも搭載されていたものと同じでした。

1966年には、排気量を1255ccに拡大し、5速マニュアルギアボックスや追加のフロントランプなどを装備した「8 ゴルディーニ 1300 (R1135)」が登場。1968年にはR10と共にマイナーチェンジを行い、全車1108ccエンジンとなり、ダッシュボードのデザインも変更されました。同時に、ウェーバー製キャブレターと4灯式ヘッドランプを装備した「8S (R1136)」を追加。8Sはイエローのボディカラーのみの設定でした。また、1965年に一度消えた「マジョール」の名称も復活させました。1970年には、後継車となるR12用の1289ccエンジンも搭載されました。

世界各国での生産と販売

ルノー8はフランス本国だけでなく、ベネズエラ、ブルガリア、ルーマニア、メキシコ、オーストラリア、モロッコ、カナダ、アルジェリアなど、世界各国で生産されました。スペインのFASA-Renaultやメキシコでは、1976年まで生産が続けられました。ブルガリアでは「BULGARRENAULT 8」、ルーマニアでは「ダチア 1100 (Dacia 1100)」という名称で販売されました。フランスでの生産は1971年に終了し、前輪駆動のR12やR6にバトンタッチしました。

日本での展開

日本では、当時の輸入代理店である日英自動車によって正規輸入されていました。

まとめ

ルノー8は、高度な技術とスタイリッシュなデザインを兼ね備えた、フランスが生んだ名車です。多くの派生モデルと世界各国での生産は、その人気と影響力の大きさを示しています。今日でも多くの愛好家を魅了し続ける、自動車史に名を刻む一台と言えるでしょう。

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