ルノー・9

ルノー9：世界を舞台に活躍したフランスのコンパクトカー

ルノー9は、フランスの自動車メーカー、ルノー社が1981年から1989年にかけて製造・販売した乗用車です。そのスタイリッシュなデザインと、当時としては先進的なメカニズムが評価され、ヨーロッパのみならず、北米、南米、アジアなど世界各国で愛されました。

開発と販売戦略

ルノー9は、それまでのルノー14の後継車種として開発されました。ルノー14が5ドアハッチバックのみだったのに対し、ルノー9は4ドアセダンボディを主軸に展開。これは、北米市場への進出を強く意識した戦略的な選択だったと考えられています。

1年余り後の1983年には、ハッチバックボディの兄弟車であるルノー11が発売されました。さらに同年、ルノーはアメリカン・モーターズ社(AMC)との提携により、北米市場で「ルノー・アライアンス」としてルノー9を販売開始しました。北米仕様は、本国仕様にはない2ドアセダンやコンバーチブルもラインナップに加わり、多様な顧客ニーズに対応しました。ステーションワゴンの計画もあったようですが、残念ながら実現には至りませんでした。

ルノー9は、高い評価を獲得し、1982年には「ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞。北米市場においても、「Car and Driver 10Best」や「Motor Trend カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞するなど、その優れた性能が広く認められました。

デザインとマイナーチェンジ

ルノー9のデザインは時代を反映したもので、デビュー当初は角型2灯式のヘッドランプが特徴的でした。1985年のマイナーチェンジでは、ルノー11と同じ角型4灯式に変更され、さらに1986年のマイナーチェンジでは、よりシャープな印象を与えるスラントした横長の角型ランプへと進化しました。これらのマイナーチェンジによって、ルノー9のデザインは時代に合わせて洗練されていきました。

フランスでの生産は1989年まで続けられましたが、前年に登場したルノー19に生産を譲りました。しかし、海外市場では生産が継続され、トルコでは2000年まで生産が続けられました。

メカニズム

エンジン

ルノー9のエンジンは、初期モデルではルノー5と共通の1.1Lと1.4LのOHVエンジンを搭載していました。1983年には、新たに開発された1.6L SOHCディーゼルエンジンが追加されました。1985年には、ルノー11に搭載されていたターボエンジンを搭載した「ルノー9ターボ」が登場。1.4Lターボエンジンにインタークーラーが組み合わされ、優れた動力性能を発揮しました。105psに若干デチューンされていましたが、ラリーカーベースのGr.A車両は約220bhpという高出力を発揮しました。同時期には、ボルボとの共同開発による1.7L SOHCエンジンも搭載され、より上級グレードのモデルに採用されました。1986年には、1.1Lエンジンの排気量が1.2Lに拡大され、ターボエンジンの出力も向上しました。

駆動系とサスペンション

ルノー9は前輪駆動方式を採用し、エンジンは横置きに搭載されていました。ルノー社では14に次いで横置き方式を採用しましたが、14とは異なり、エンジンとトランスミッションを横一列に配置するジアコーサ方式を採用しました。トランスミッションは、4MT/5MTに加え、3ATも設定されました。サスペンションは、フロントにマクファーソンストラット、リアに横置きトーションバーを用いたトレーリングアームを採用しました。ルノー4/5/14に見られた左右ホイールベースの違いは解消され、改良が加えられていました。

まとめ

ルノー9は、その先進的な技術と戦略的な市場展開により、世界中で高い評価を受けました。デザイン、メカニズム、そして販売戦略、どれをとっても成功したモデルであり、自動車史に名を刻む1台と言えるでしょう。その技術は後継車種へと受け継がれ、ルノー社の発展に大きく貢献しました。時代を超えて愛されるルノー9の歴史は、自動車業界にとって貴重な財産です。

もう一度検索