ルパン三世 パイロットフィルム

『ルパン三世 パイロットフィルム』：ルパン三世アニメの原点

1969年に制作された『ルパン三世 パイロットフィルム』は、モンキー・パンチ原作の漫画『ルパン三世』を初めてアニメーション化した作品です。テレビシリーズ開始以前に制作されたパイロット版であり、原作のエピソードを基に、ルパン三世とその仲間たちのキャラクター性や関係性を紹介する内容となっています。上映時間は約13分と短編ですが、その内容は、後のテレビシリーズや劇場版に多大な影響を与えました。

2つのバージョン：シネスコ版とスタンダード版

パイロットフィルムには、大きく分けて2つのバージョンが存在します。1つは、劇場公開を前提に1969年に制作されたシネスコサイズ版、もう1つは、劇場公開が頓挫した後、テレビシリーズ企画提案のために1971年頃に制作されたスタンダードサイズ版です。両バージョンはほぼ同じ内容ですが、背景、細かい演出、一部のキャストに違いが見られます。

特に注目すべきは、明智小五郎がメインキャラクターとして登場している点です。これは、著作権の問題により、テレビシリーズでは登場しなかったため、パイロットフィルムのみで確認できる貴重な描写となっています。

アニメ化への道のり：原作への敬意と革新

モンキー・パンチは、当時のアニメに不満を持ち、特に子供向けアニメの枠を超えた『ルパン三世』の世界観をアニメで表現することに懐疑的でした。しかし、東京ムービー（現トムス・エンタテインメント）の藤岡豊の熱意ある説得を受け、アニメ化のテストとしてパイロットフィルムの制作を許可しました。

演出を務めた大隅正秋は、既存のアニメの形式に合わせるのではなく、原作の雰囲気をそのままアニメに移し替えることを目指しました。実写作品の手法も参考にし、原作の世界観を忠実に再現することに成功しています。完成したパイロットフィルムは、モンキー・パンチから高い評価を受け、アニメ化への道を切り開きました。

後続作品への影響：映像と演出の流用

スタンダード版は『TV第1シリーズ』のオープニングに再構成され使用されました。最初のオープニングではキャラクターのデザインが変更されていましたが、2代目オープニングでは、パイロットフィルムの映像がそのまま多く流用されたため、作画の差異が見て取れる箇所があります。

さらに、ルパンがセスナ機から自動車に飛び移るシーンや、アジトから巨大凧で脱出するシーンなどは、『TV第1シリーズ』の複数のエピソードに流用されています。劇場映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』の特報や、『ルパン三世VS名探偵コナン THE MOVIE』のオープニングでも、パイロットフィルムの映像が使用・リメイクされています。

長い眠りから目覚めて：公開と収録

制作後長らく日の目を見ることのなかったパイロットフィルムですが、1988年の読売テレビ開局30周年記念特番でスタンダード版が放送されたことで、一般に知られるようになりました。その後、VHS、DVD、そして『ルパン三世展』などを通して、多くのファンに観賞される機会が得られるようになりました。2019年には、モンキー・パンチの追悼としてWOWOWで両バージョンが放送されました。

スタッフとキャスト

パイロットフィルムの制作には、数々のアニメーション作品で活躍した錚々たるスタッフが参加しました。大塚康生、芝山努といったアニメーター、前田憲男による音楽など、当時のアニメーション界のトップクラスの技術と才能が集結した作品と言えるでしょう。

『ルパン三世 パイロットフィルム』は、ルパン三世アニメの始まりであり、その後のシリーズ作品に大きな影響を与えた重要な作品です。ルパン三世の世界観を深く理解するためには、ぜひ一度鑑賞することをおすすめします。

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