ルパン三世・Tokyo Transit〜featuring YASUO YAMADA

『ルパン三世・Tokyo Transit-featuring YASUO YAMADA』：山田康雄氏の魅力が詰まった、幻のアルバム

『ルパン三世・Tokyo Transit-featuring YASUO YAMADA』は、1993年3月21日に発売された、モンキー・パンチ原作のアニメ『ルパン三世』シリーズのCDアルバムです。プロデューサー兼音楽は大野雄二氏、ルパン三世の声優である山田康雄氏がモノローグと脚本に携わっており、ユー&エクスプロージョン・バンドが演奏を担当しています。

このアルバムは、パリから目的地へ向かうルパン三世が東京に一泊する様子を描いた、独特の構成が魅力です。到着から翌朝の出発までの出来事を、音楽と山田氏のナレーションで紡ぎ出しています。しかし、単なるルパン三世のサウンドトラックとは一線を画す内容となっています。

サブタイトルにもある通り、山田康雄氏を強くフィーチャーした作品であり、「せ・しゃれまん」と同様に、山田氏個人のアルバムとしての側面が非常に強い点が特徴です。そのため、便宜上山田康雄氏のセカンドアルバムという位置づけにもなっています。

アルバムのモノローグでは、山田氏がルパン三世とは関係のないアドリブを多数収録しており、特に8曲目では、過去のアルバム『せ・しゃれまん』を意識したアドリブも聴くことができます。このことから、ファンからは「せ・しゃれまん2」とも呼ばれています。

山田氏と長年の付き合いがある大野雄二氏への電話で、山田氏は冗談めかして「次のアルバムを作らないと死んじゃうよ」と発言し、次のアルバム制作を促していました。多忙だった大野氏は軽く受け流しましたが、1995年に山田氏が急逝。大野氏は、山田氏のために次のアルバムを作れなかったことを深く悔やんでいると語っています。

脚本を担当した有川正沙子氏は、山田氏の親友の娘であるというエピソードも興味深い点です。

現在、このアルバムは廃盤となっており、山田氏の最後のアルバムということもあり、希少価値が高いため、オークションサイトなどに出品されると高値で取引されています。しかし、2010年2月には、音源を抱えるコロムビアから、HQCDとデジタルリマスタリングによる高音質化が施された復刻盤『ルパン三世ミュージック・トレジャーズ』が発売され、再び多くのファンに聴かれる機会が得られるようになりました。

『ルパン三世・Tokyo Transit-featuring YASUO YAMADA』は、ルパン三世の世界観を存分に楽しみつつ、山田康雄氏の個性と才能を余すことなく感じることができる、まさに貴重な一枚です。その独特の雰囲気と、山田氏の人となり、そして二度と聴くことのできない貴重な音源としての価値は、長くリスナーを魅了し続けるでしょう。

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