せ・しゃれまん

山田康雄ファーストアルバム『せ・しゃれまん』：大人のラブストーリーと異国情緒あふれるサウンド

1970年代後半、声優ブームの中で多くの声優が音楽アルバムを発表する中、山田康雄はそれらの申し出を断り続けてきました。しかし、メジャーレーベルからリリースできる機会は稀であると考え、「シャレのつもり」で自身のファーストアルバム『せ・しゃれまん』の制作を決意します。

音楽制作には親交のあった大野雄二を起用。多忙を極めていた大野が引き受けてくれるとは予想していなかった山田でしたが、大野の才能によってアルバムは独特の雰囲気に彩られます。アルバム全体は、大人のラブストーリーをオーディオドラマと楽曲で表現した構成です。

A面は、ルパン三世シリーズを彷彿とさせる、フュージョン色の濃いサウンドが特徴です。一方、B面では、パリ、ローマ、アフリカ、香港、マドリードなど、世界各国の情景をイメージしたバラエティー豊かな楽曲が展開。それぞれの楽曲には、各国の女性をイメージした物語が織り込まれており、独特の雰囲気を醸し出しています。

楽曲の作詞は山田康雄自身が行い、作曲・編曲は大野雄二が担当。山田自身は自身の歌唱力を「最低」と評していますが、大野雄二の卓越した音楽性と、オーディオドラマにおける山田の演技力によって、作品全体に独特の味わい深さが生まれています。

アルバムには、市毛良枝、クロージャ・ペレティ、胡坤祥、スーザン・キャンベルといった豪華なゲスト陣が出演。さらに、大野雄二も特別出演し、山田とアドリブでやり取りを交わすなど、聴きどころ満載です。アーティスト名義は「山田康雄＆YOU」となっており、大野雄二の参加が強調されています。

山田の友人である藤村俊二による推薦文も収録されている点も注目に値します。

長らくアナログ盤のみの流通で入手困難だった『せ・しゃれまん』ですが、2004年3月17日に発売されたCD-BOXセット『LUPIN THE REMASTER』に収録され、CD化されました。これは、後に発売された『ルパン三世・Tokyo Transit〜featuring YASUO YAMADA』にもつながる重要な作品と言えます。

収録内容

A面は、オーディオドラマ「ラブ・フィーバー」を軸に、山田康雄と市毛良枝によるナレーションと、「またひとつ恋が終った」「セ・ラ・ヴィ」の2曲が挿入歌として収録されています。

B面は、山田康雄によるナレーションと、大野雄二の特別出演をフィーチャーした構成。パリ、ローマ、アフリカ、香港、マドリードを舞台にしたエピソードが、それぞれの楽曲と共に展開されます。挿入歌として「クリスチーヌ」「君はセクシー」が収録。

制作背景と影響

『せ・しゃれまん』は、声優が自身の音楽アルバムを制作する流れの中で生まれた作品でありながら、山田康雄の意向により、商業的な成功よりも、あくまで「シャレ」としての側面が強い作品となっています。しかし、その「シャレ」の奥には、山田康雄と大野雄二の深い信頼関係、そして、高度な音楽性と演技力が凝縮されています。 このアルバムは、単なる声優の音楽作品という枠を超え、音楽、演劇、そして友情が融合した、稀有な作品と言えるでしょう。

参考文献

ルパン三世 The Remaster
ルパン三世よ永遠に-山田康雄メモリアル-
月刊アニメージュ 1979年10月号 pp.130-131 「ルパンのつぶやき」第10回

関連作品

ルパン三世・Tokyo Transit〜featuring YASUO YAMADA

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