ルブラン (楽器メーカー)

ルブラン社：クラリネットの伝統と革新を紡ぐ楽器メーカー

ルブラン社は、アメリカ合衆国ウィスコンシン州ケノーシャに本拠を置く、世界的に名高い楽器メーカーです。クラリネットを中心に、その歴史は19世紀後半のフランスにまで遡り、今日ではクラリネット・ファミリーと呼ばれる多彩な楽器群を製造することで知られています。

クラリネット・ファミリー：幅広いラインナップ

ルブラン社は、B♭管やA管といったオーケストラや吹奏楽で標準的に使用されるクラリネットに加え、C管、D管、E♭管、A♭管、アルトクラリネット、バセットクラリネット、バセットホルン、バスクラリネット、コントラアルトクラリネット、コントラバスクラリネット、そして非常に珍しいオクトコントラバスクラリネットまで、幅広いラインナップを誇ります。特にオクトコントラバスクラリネットは、ルブラン社が唯一製造した楽器として知られています。

現在では、生産拠点をアメリカに移転したことに伴い、アメリカ製のクラリネットを製造しています。著名なイギリス人クラリネット奏者、ジュリアン・ブリス氏とのコラボレーションモデル「Bliss」や、入門者向けのプラスチックボディのクラリネット、そしてプラスチックボディのアルトクラリネット、バスクラリネット、コントラアルトクラリネット、コントラバスクラリネットなどが製造されています。クラリネット以外にも、プラスチックボディとグラナディラ製のオーボエも製造しています。

伝統と技術：独自のサイドトリルキー

ルブラン社のクラリネットは、コントラバス系を除き、一直線に並んだ独自のサイドトリルキーを採用していることが最大の特徴です。この設計は、演奏性と音質に独特の個性を付与しており、ビュッフェ・クランポン社やセルマー・パリ社と並ぶ、世界的に高い評価を獲得しています。特にアルトクラリネット以下のハーモニークラリネットは、古くから日本でも高い人気を誇り、近年ではソプラノクラリネットも高い評価を得ています。金属製のコントラクラリネットは、その独特の形状から「ペーパークリップ」や「水道管」といった愛称で親しまれ、人気を集めています。

ルブラン社の歴史：フランスからアメリカへ

ルブラン社の歴史は、19世紀後半にジョルジュ・ルブランによってフランスで創業されたG.ルブラン社に始まります。1904年にはフランス最古の楽器メーカーの一つであるノブレ社を吸収合併するなど、早くから楽器製造における高い技術力を確立しました。第一次世界大戦後、ジョルジュと息子のレオン・ルブランによってG.ルブラン社が設立され、第二次世界大戦中には、のちに重要な役割を果たすヴィトー・パスクッチがルブラン家と出会います。パスクッチは当時、グレン・ミラー楽団の楽器修理担当者でした。

1946年、レオンとパスクッチは、フランスのG.ルブラン社製の木管楽器を輸入するために、ウィスコンシン州ケノーシャにG.ルブラン株式会社を設立しました。1951年からは、学生向けの「ヴィトー」ブランドのクラリネットやサックスを導入するなど、事業を拡大していきます。その後、G.ルブラン株式会社は、フランク・ホルトン社、ウッドウィンドカンパニー、マーチン社といった楽器メーカーを吸収合併することにより、製品ラインナップを大幅に拡大しました。1981年からは、ヤナギサワ製サクソフォーンの北米における独占販売権も獲得しました。

1989年には、アメリカのG.ルブラン株式会社がフランスの親会社であるG.ルブラン社の経営権を握りました。フランス工場の火災などを経て、2004年にはスタインウェイ・ミュージカル・インスツルメンツ社に買収され、コーン・セルマー社の傘下となりました。現在、ウィスコンシン州の3拠点に約300人、フランスに約40人の従業員を擁し、クラリネット製造の中心地として活動を続けています。

日本におけるルブラン社

日本では野中貿易株式会社が輸入元、株式会社ノナカが販売元として、ルブラン社の楽器を広く市場に供給しています。高い品質と独自の個性で多くの演奏家から支持を集め、日本の音楽シーンに貢献しています。ルブラン社のクラリネットは、その伝統と革新を融合させた、まさに「職人技」と言えるでしょう。

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