バセットホルン

バセットホルンとは

バセットホルン（英: Basset-horn、独: Bassetthorn）は、クラリネットに属する木管楽器で、特に古楽器としての位置づけがあります。この楽器の特徴は、その独特の形状と豊かな音色です。

構造と音色

バセットホルンは、シングルリードの円筒管構造を持つ木管楽器であり、基本的にはクラリネットと類似しています。ただし、バセットホルンはクラリネットよりも大きく、また管の中心付近で曲がっている点が特長です。古いものでは、マウスピース近くで曲がっているタイプも見られます。「ホルン」という名前が付いていますが、これは金管楽器であるホルンとは関係ありません。通常、F管の移調楽器として使用されることが多く、G管やD管のバセットホルンも存在します。通常のクラリネットの最低音は記音ホ（E3）ですが、バセットホルンは記音ハ（C3）まで音域が拡張されています。

バセットホルンの音色は、クラリネットのものと類似していますが、より深く、独特の暗さを持っており、輝きが少ないといわれています。この音色は、特に室内楽やオーケストラの中で特別な役割を果たすことがあります。

使用楽曲

現在、バセットホルンのために作曲された多くのクラシック作品は忘れ去られつつありますが、18世紀のクラリネット奏者アントン・シュタードラーはこの楽器のための作品をいくつかの作曲家に依頼しました。中でもモーツァルトは、バセットホルンを特に多く取り入れた作曲家とされ、彼の作品にはこの楽器が使用されています。代表作には、セレナーデ第10番変ロ長調K.361『グラン・パルティータ』や、『フリーメーソンのための葬送音楽』K.477、さらには『12の二重奏曲 ハ長調』K.487(496a)、G管バセットホルン用の協奏曲K.621b、レクイエムK.626などがあります。また、彼のオペラや室内楽作品にもバセットホルンが登場します。他にも、カール・シュターミッツによるG管バセットホルンと小オーケストラのための協奏曲があり、これは一般的に使用されるF管バセットホルン用に手直しされて演奏されます。

19世紀にはメンデルスゾーンがバセットホルンとクラリネット、弦楽器のためにいくつかの小品（作品113および114）を作曲しました。しかしその後しばらく、バセットホルンはリヒャルト・シュトラウスがオペラ『エレクトラ』や『ばらの騎士』などで使用するまで注目されることはありませんでした。20世紀後半には、シュトックハウゼンがオペラ『リヒト』でこの楽器に重要な役割を持たせました。とはいえ、バセットホルンは現代ではあまり使用されていないのが現実です。

現代においては、F管のアルトクラリネットや、A管のバセットクラリネットがこの楽器の代わりに用いられることが多くなっています。

現在販売されているバセットホルン

今日では、さまざまなメーカーからバセットホルンと名付けられた楽器が販売されていますが、多くはF管のアルトクラリネットのデザインを模したもので、アルトクラリネット用のマウスピースを使って演奏するタイプが一般的です。日本国内の楽器メーカーでは製造されていないものの、海外ではセルマー社のモデル20や、ビュッフェ・クランポン社のプレステージ、ルブラン社の315Sなど、各社が異なるバセットホルンを展開しています。特にドイツやオーストリアの工房では、伝統的なシステムに基づいた楽器が製造・販売されています。

関連項目

• - 木管楽器
• - クラリネット
• - 移調楽器

このように、バセットホルンはクラシック音楽において特異な役割を果たしながらも、徐々にその存在感が薄れてきている楽器です。

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