ル・シネマ

ル・シネマ（LE CINÉMA）

東京都渋谷区を拠点とするミニシアター、ル・シネマは、1989年9月にBunkamura内にて開館しました。長年にわたり、国内外の優れたアート系作品を中心に上映し、多くの映画ファンに愛されてきた存在です。Bunkamuraの再開発に伴い、2023年4月10日から一時休館となりましたが、同年6月16日には渋谷東映プラザ内の渋谷TOEI跡地へ移転。「Bunkamura ル・シネマ 渋谷宮下」として新たなスタートを切り、現在もその活動を続けています。

特色

ル・シネマが特筆される点の一つは、開館当初から一貫して「女性に視点を当てた作品」を重視する姿勢です。特に開館初年度に上映された『カミーユ・クローデル』以来、この方針は明確に打ち出され、幅広い世代の女性たちからの厚い支持を集めてきました。これは、単に特定のジャンルに偏るのではなく、多様な視点から描かれた女性の物語や、女性監督による作品などを積極的に紹介することで、多くの観客に共感を呼んでいる結果と言えるでしょう。

また、上映作品のパンフレットもル・シネマならではの特徴を持っています。一般的な映画館で販売されるA4判のパンフレットよりも大判で、紙質も厚く、質の高い印刷が施されています。さらに、作品によっては最後にシナリオが採録されているなど、資料としての価値も高い、熱心なファンにとっては見逃せないアイテムとなっています。

劇場での上映活動に加え、ル・シネマはデジタル領域への展開も行っています。2021年8月11日からは、当館が独自に配給権を取得した作品などをオンラインで配信するウェブサイト「APARTMENT by Bunkamura LE CINÉMA」のサービスを開始しており、劇場に足を運ぶことが難しい人々にも作品を届ける試みを行っています。

設備

Bunkamura内にあった旧ル・シネマは、ル・シネマ1（150席）とル・シネマ2（126席）の2スクリーン構成でした。

渋谷宮下へ移転した現在の「Bunkamura ル・シネマ 渋谷宮下」は、渋谷東映プラザの7階と9階にスクリーンを備えています。

7階スクリーン: 268席に加え、車椅子スペースが設けられています。上映システムとしては、DCP（2K/4K）、Blu-rayに対応するほか、希少となりつつある35ミリフィルム上映にも対応しています。これにより、過去の名作をオリジナルのフォーマットで鑑賞できる機会を提供しています。
9階スクリーン: 187席に加え、車椅子スペースが用意されています。こちらはDCP（2K）、Blu-ray上映に対応しています。

両スクリーンともに、快適な鑑賞環境を提供し、多様な作品フォーマットに対応することで、幅広い種類の映画体験を可能にしています。また、劇場内にはスタンドカフェ「ドゥ マゴ パリ」が併設されており、鑑賞前後の休憩や待ち合わせに利用できる空間も用意されています。

主な上映作品の例

ル・シネマでは、その歴史の中で数多くの話題作や傑作を上映してきました。開館時のオープニング作品である『遠い日の家族』や、女性視点作品の象徴ともなった『カミーユ・クローデル』をはじめ、『プロヴァンス物語二部作』、『シラノ・ド・ベルジュラック』、『さらば、わが愛/覇王別姫|さらば、わが愛_覇王別姫』、『王妃マルゴ』、『花様年華』、『活きる』、『英国王のスピーチ』、『アムール』など、時代を超えて愛される作品や、その後のミニシアターでの上映に影響を与えた作品も多く含まれています。これらの作品ラインナップは、ル・シネマが選び抜いた質の高い映画文化を提供し続けていることの証と言えるでしょう。

新しい場所での活動を開始した「Bunkamura ル・シネマ 渋谷宮下」は、これまでの理念を受け継ぎつつ、現代の観客のニーズにも応える形で、これからも渋谷の映画文化の一翼を担っていく存在として期待されています。

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