ルーサー・ホワイティング・メーソン

ルーサー・ホワイティング・メーソン：日米の音楽教育に貢献した人物

ルーサー・ホワイティング・メーソン（Luther Whiting Mason, 1818年4月3日 - 1896年7月14日）は、アメリカ合衆国の著名な音楽教育者であり、明治初期の日本政府に招聘されたお雇い外国人として、日本の西洋音楽教育の黎明期に重要な役割を果たしました。

生涯と業績

メーソンはメイン州ターナーで生まれ、1838年から1840年までボストン音楽アカデミーでローウェル・メイスンに師事しました。アメリカ各地で音楽教師として長年教鞭を執り、音楽教育者としての地位を確立しました。独学で音楽教育を確立し、唱歌の収集、音楽教科書や掛図の公刊を通じて、音楽教育の革新に貢献しました。

1864年から1879年のボストン滞在中に、文部省の伊沢修二に唱歌を指導したことが縁となり、1879年に日本政府に招聘されました。1880年3月に来日し、文部省音楽取調掛で西洋音楽の指導にあたり、音楽教員の育成や教育プログラムの開発に尽力しました。

日本での活動

メーソンは、伊沢修二と共に、日本の音楽教育の基礎を築きました。彼は『小學唱歌集』の編纂にも関わり、日本にピアノとバイエルの『ピアノ奏法入門書』を持ち込みました。上真行、奥好義、辻則承、鳥居忱、中村専、加藤錦子、幸田延、ハワイ王カラカウアなど、多くの日本人にピアノ、ヴァイオリン、オルガンなどの楽器を指導しました。音楽取調掛での和声講義では、ニューイングランド音楽院のスティーヴン・アルバート・エメリーの添削を参考に講義を行うなど、教育内容の質を高める工夫も凝らしました。また、岡倉覚三（天心）とも親交があったとされています。

1882年7月、メーソンは日本を離れましたが、日本の西洋音楽教育に大きな足跡を残しました。帰国後も伊沢修二に手紙を送り、日本のオーケストラ発展のためにオーボエやホルンの演奏家を養成することを提言するなど、日本の音楽界の発展を気にかけていました。

帰国後はヨーロッパ各国を歴訪し、楽譜の収集や指導法の視察を行い、アメリカの音楽教育に還元しました。

1896年、メーソンはメイン州バックフィールドで生涯を閉じました。その功績を称えられ、勲四等瑞宝章が授与されました。

音楽教育者としての功績

ルーサー・ホワイティング・メーソンは、アメリカと日本において、音楽教育の発展に大きく貢献した人物です。彼の教育方法や教材は、両国の音楽教育に大きな影響を与えました。特に、日本においては、西洋音楽の基礎を築き、後の音楽教育の発展に不可欠な役割を果たしました。

参考文献

吉川英史『日本音楽の歴史』創元社、1965年。ISBN 9784422700038
Macgarrel, Lary『Luther Whiting Mason の音楽教育について 明治初期の日本音楽教育の背景として』（修士論文）東京芸術大学、1976年。
中村理平「第9章 ルーサー・ホワイティング・メーソン」『洋楽導入者の軌跡 : 日本近代洋楽史序説』刀水書房、1993年、403-553頁。ISBN 4887081464。
Hall, Bonlyn (2001年). “Mason, Luther Whiting”. Grove Music Online. Oxford University Press.

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