ルーズヴェルト・サイクス

ルーズヴェルト・サイクス（Roosevelt Sykes, 1906年1月31日 - 1983年7月17日）は、アメリカのブルース音楽家。「ザ・ハニードリッパー (The Honeydripper)」の通称で知られ、ブルースピアノ奏者として名を馳せました。葉巻をくわえた姿がトレードマークで、陽気で激しいブギウギは多くの人々に影響を与えました。

生い立ちと音楽キャリア

サイクスはアーカンソー州エルマーで生まれ、ヘレナ近郊で育ちました。15歳頃からバレルハウス・スタイルのブルースをピアノで演奏し始め、各地を巡業。ミシシッピ川沿いの製材所や、労働者キャンプなどで演奏し、男性客を前に、生々しく性的に露骨な内容の歌を歌い、素材を集めていきました。

放浪の末、ミズーリ州セントルイスに辿り着き、そこでセントルイス・ジミー・オーデンと出会います。オーデンはブルースのスタンダード曲「Goin' Down Slow」の作者であり、この出会いがサイクスの音楽キャリアに大きな影響を与えました。

1929年、サイクスはスカウトされニューヨークへ。オーケー・レコードでレコーディングを行い、「'44' Blues」をリリース。この曲はブルースのスタンダードとなり、サイクスの代表曲となりました。その後、イージー・パパ・ジョンソン、ドビー・ブラッグ、ウィリー・ケリーといった変名を用いて、様々なレーベルでレコーディングを行いました。サイクスはオーデンと共にシカゴへ移り、1934年にデッカ・レコードと契約し、最初の全盛期を迎えます。1943年にはブルーバード・レコードと契約し、ザ・ハニードリッパーズと共演しました。サイクスとオーデンは、その後も1960年代まで音楽的な交流を続けました。

シカゴに定住してからは、歌詞が都会的なものへと変化し、伝統的な12小節のブルースの代わりに、8小節のブルース、ポップ、ゴスペルの構造を取り入れるようになりました。しかし、外見的な変化とは裏腹に、第二次世界大戦後の音楽シーンにおいて、サイクスの人気は徐々に衰えていきました。RCAビクターとの契約終了後も、ユナイテッド・レコードなどの小さなレーベルでレコーディングを続けましたが、1950年代半ばにはそうした機会も減ってしまいました。

ニューオーリンズでの晩年

1954年、サイクスはエレクトリック・ブルースが主流となりつつあったシカゴを離れ、ニューオーリンズへ移住。1960年代にレコーディングを再開した際、デルマーク・レコード、ブルースヴィル・レコード、ストーリーヴィル・レコード、フォークウェイズ・レコードといった、消えゆくブルースの歴史を記録しようとしていたレーベルが協力しました。サイクスは晩年をニューオーリンズで過ごし、1983年7月17日に心筋梗塞で亡くなりました。

遺産

サイクスの音楽活動は、戦前から戦後にかけての長期間に及びます。彼のピアノブギや、わいせつな歌詞は、ブルースへの貢献を特徴づけるものです。「44 Blues」、「Driving Wheel」、「Night Time Is the Right Time」など、影響力のあるブルースの名曲を数多く残しました。

サイクスは、1999年にブルースの殿堂入りを果たし、2011年にはジェネット・レコードのウォーク・オブ・フェームにも名を連ねています。

主要なディスコグラフィー

The Return of Roosevelt Sykes (Bluesville, 1960)
The Honeydripper (Bluesville, 1961)
Piano Blues (Folkways, 1966)
Blues Roots/Chicago – The 1930's (Folkways, 1967)
The Country Blues Piano Ace 1929–1932 (Yazoo, 1972)
Feel Like Blowing My Horn (Delmark, 1973)
* Blues by Roosevelt "The Honeydripper" Sykes (Smithsonian Folkways, 1995)

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