ルーチョ・ダッラ

ルチオ・ダッラ：イタリア音楽史に輝く才能の軌跡

ルチオ・ダッラ (1943年3月4日-2012年3月1日) は、イタリアのボローニャ出身のシンガーソングライター、音楽家、そして俳優として、イタリア音楽界に多大な貢献を果たした人物です。彼の音楽は、ジャズ、フォーク、ポップス、クラシック、オペラなど、多様な要素を融合させた独特のスタイルで知られ、世代を超えて愛され続けています。

クラリネットから始まった音楽の旅

幼少期からクラリネットを始め、地元ボローニャのジャズバンド「Rheno Dixieland Band」で演奏経験を積みます。このバンドには、後に著名な映画監督となるプピ・アヴァティも在籍しており、ダッラの類まれな才能に感銘を受けたアヴァティは、ダッラにバンドを辞める決意を固めたと伝えられています。アヴァティ監督は自身の映画作品にもダッラとの友情が深く影響していることを明かしています。

1960年代には、フランスのアンティーブで開催されたジャズフェスティバルに参加し、見事最優秀賞を受賞。この功績により、ローマの「Second Roman New Orleans Jazz Band」とのレコーディングや、RCAイタリアとの契約へと繋がります。

その後、シンガーソングライターのジーノ・パオリに見出され、ソロシンガーとしての道を歩み始めますが、1965年のカンタジーロ音楽祭でのソロデビューは、当時としては先鋭的な音楽性と外見が評価されず、成功とはなりませんでした。最初のアルバム『1999』(1966年)も商業的には振るいませんでした。しかし、彼は持ち前の才能と情熱を失うことなく、音楽活動を継続します。1970年に発表した『Terra di Gaibola』は、初期の代表作として高く評価されています。

ロベルト・ロヴェルシとのコラボレーション

1970年代に入ると、ボローニャ出身の詩人、ロベルト・ロヴェルシとのコラボレーションが始まります。ロヴェルシが作詞を担当した『Il giorno aveva cinque teste』(1973年)、『Anidride solforosa』(1975年)、『Automobili』(1976年)の3枚のアルバムは、ロヴェルシの詩とダッラの即興演奏の融合が話題を呼び、批評家から高い評価を得ました。特に『Automobili』は、ダッラの音楽的実験性が際立つ作品であり、彼の代表曲の一つである「Nuvolari」も収録されています。しかし、このアルバムを最後に2人は袂を分かちます。

ソロ活動での飛躍

ロヴェルシとの活動を終えた後、ダッラは作詞も自ら行うようになります。『Com'è profondo il mare』(1977年)を皮切りに、次々とヒット作を発表し、人気を不動のものにしていきます。特に『Banana Republic』(1979年)や、セルフタイトルのアルバム『Dalla』(1980年)は大きな成功を収めます。

そして1986年、彼のキャリアを代表する名曲「カルーソー」が誕生します。この曲は、イタリアを代表するテノール歌手、エンリコ・カルーソーへのオマージュとして作曲され、世界中で数々のアーティストによってカバーされました。ルチアーノ・パヴァロッティやアンドレア・ボチェッリによるバージョンは、数千万枚のセールスを記録する大ヒットとなりました。

その後も「Attenti al lupo」(1990年)などのヒット曲を連発し、パヴァロッティとの共演や、フランチェスコ・デ・グレゴーリとの再コラボレーションなど、精力的に活動を続けます。ダッラの音楽は、ジャズを基調としながらも、フォーク、ポップス、クラシック、オペラなど、幅広いジャンルを融合させた多彩なものでした。

急逝とその後

2012年3月1日、スイスのモントルーで心臓発作のため急逝。68歳でした。彼の死はイタリアのみならず、世界中に衝撃を与えました。死後も「カルーソー」はイタリアのシングルチャートで上位にランクインし、彼の音楽の偉大さを改めて証明しました。

プライベート

ダッラは生前、自身のセクシュアリティについて公には語りませんでしたが、死後、長年のパートナーであったマルコ・アレマノ氏によって同性愛者であったことが明かされました。この告白は、イタリア社会における同性愛への認識について、新たな議論を巻き起こすこととなりました。

豊富なディスコグラフィーとフィルモグラフィー

ダッラは、20枚以上のスタジオアルバム、多数のライブアルバム、そして数々の映画音楽も手がけました。彼の音楽活動は、多岐にわたる作品群として、今もなお多くの人々の心に響き渡っています。

ルチオ・ダッラは、類まれな音楽性と才能、そして多様な音楽ジャンルを融合させた独自のスタイルで、イタリア音楽史に燦然と輝く偉大なアーティストとして、後世に語り継がれることでしょう。

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