ルートヴィヒ・シュヴェリン・フォン・クロージク内閣

フォン・クロージク内閣は、第二次世界大戦末期、ナチス・ドイツの崩壊直前に成立した短命な臨時政府です。正式名称は「シュヴェリン・フォン・クロージク内閣」で、ナチス政権下で長らく財務大臣を務めたルートヴィヒ・シュヴェリン・フォン・クロージクが首相代行を務めました。

1945年4月30日にアドルフ・ヒトラーが自殺し、その後継者として指名されたカール・デーニッツは、連合国との交渉を目指し、新たな政府を樹立する必要に迫られました。デーニッツは、連合国軍による占領を遅らせ、ドイツ国防軍の兵士やドイツ国民をソ連軍の侵攻から守ることを優先しました。そのため、デーニッツは、連合国との停戦交渉を行うための政府として、フォン・クロージク内閣を組織しました。

フォン・クロージクは、保守的な政治家であり、ナチズムへの批判的な立場も表明していましたが、デーニッツの要請を受け入れ、首相代行として政府を率いることになりました。内閣には、アルベルト・シュペーア軍需大臣や、ヴィルヘルム・カイテル国防軍最高司令部長官など、ナチス政権の主要人物も含まれていました。

フォン・クロージク内閣は、デーニッツを大統領（国家元首）とし、連合国との交渉を試みましたが、連合国は無条件降伏を要求し、交渉は決裂しました。内閣は、連合国軍の進撃により、拠点をフレンスブルクに移転し、フレンスブルク政府とも呼ばれます。しかし、その支配領域はごくわずかであり、事実上、ドイツ全土を代表する政府としての正当性は失われていました。

1945年5月8日にドイツは無条件降伏し、フォン・クロージク内閣は解散しました。デーニッツやフォン・クロージクをはじめとする内閣の主要メンバーは、連合国軍に逮捕され、戦後、戦争犯罪の罪で裁かれることになりました。

フォン・クロージク内閣は、ナチス・ドイツの終焉を象徴する出来事であり、その短命な存在は、当時のドイツの混乱と絶望的な状況を物語っています。内閣の成立と崩壊は、第二次世界大戦の終結と、戦後ドイツの再建への道のりを決定づける重要な出来事となりました。

関連事項：フレンスブルク政府

もう一度検索