ルートヴィヒ・シュヴェリン・フォン・クロージク

ルッツ・グラーフ・シュヴェリン・フォン・クロージク：ドイツ最後の首相代行

ルッツ・グラーフ・シュヴェリン・フォン・クロージク（1887年8月22日 - 1977年3月4日）は、ドイツの貴族、大蔵官僚、そして政治家として、激動の20世紀前半を生きた人物です。彼は、事実上ドイツ国最後の首相代行を務めたことで知られています。

生い立ちと初期のキャリア

クロージクは、プロイセン王国のザクセン県ラートマンスドルフ（現在のザクセン＝アンハルト州シュタースフルト）で生まれました。父方のクロージク家は旧貴族でしたが、無位無冠の家柄でした。一方、母方のシュヴェリン家は、メクレンブルクとポンメルンの貴族でした。幼少期を修道院学校で過ごした後、ハレ大学、ローザンヌ大学、オックスフォード大学で法学と政治学を学びました。第一次世界大戦では予備役将校として従軍し、戦傷を負いながらも一級鉄十字章を受章しています。

財務官僚としての台頭

戦後、クロージクは財務省の高級官僚として頭角を現しました。上シレジアのヒンデンブルク市役所勤務を経て、ベルリンの財務省に迎えられ、参事官、上級参事官、課長と順調に昇進。1925年には母方の伯父の養子となり、シュヴェリン伯爵の称号を継承しました。1929年には財務省予算部長、1931年には賠償部長を兼務し、官僚としてのキャリアを着実に積み重ねていきました。

財務大臣としての政治関与

1932年、クロージクはフランツ・フォン・パーペン内閣において財務大臣に任命され、本格的に政治の世界へと足を踏み入れました。パウル・フォン・ヒンデンブルク大統領の要請によるものでした。その後、クルト・フォン・シュライヒャー内閣、そしてアドルフ・ヒトラー内閣でも財務大臣を務め続けました。

ナチス政権下での役割

ヒトラー内閣において、クロージクは保守派の代表として重要な役割を担いました。ナチ党の台頭を歓迎し、その政策の多くに賛同し、ユダヤ人を社会から排除する法律にも関与しました。しかし、彼は宣誓の直前になって財政に関するいくつかの約束をヒトラーから取り付けています。1937年にはナチス党に入党し、党員番号を与えられています。また、経済相ヒャルマル・シャハトと共にドイツ再軍備計画の監督にもあたりました。

クロージクは、ユダヤ人に対する迫害政策に反対することはなく、1933年の「職業官吏再建法」や1938年の福祉事業からのユダヤ人排除法に署名しました。しかし、彼は1938年のスデーテン危機に際しては、ドイツ経済が戦争準備ができていないとして開戦に反対し、軍事と経済の強化を優先すべきだと主張しました。

第二次世界大戦末期と「首相代行」

1945年4月、ソ連軍がベルリンに迫る中、クロージクはベルリンを脱出。ヒトラーの自殺後、カール・デーニッツを首班とするフレンスブルク政府において、「首相代行」兼外相に指名されました。この政府は、降伏直前の混乱期に成立したため、実質的な権限はほとんどありませんでした。彼は、デーニッツに「条約による降伏」を勧めるなどの行動を取りました。

戦後と裁判

ドイツ降伏後、クロージクは連合国軍に逮捕されました。ニュルンベルク継続裁判では、財務相としての責任を問われ、ユダヤ人から奪った財産の洗浄や強制収容所への資金提供に関与したとして、懲役10年の判決を受けました。

晩年と死

しかし、冷戦下の国際情勢の変化により、クロージクは1951年に恩赦を受け、釈放されました。その後は西ドイツのエッセンで暮らし、財政に関する著書や回顧録を出版しました。1977年3月4日、89歳で死去しました。彼の孫であるベアトリクス・フォン・シュトルヒは、ドイツのための選択肢の政治家として活躍しています。


クロージクは、ドイツの激動期において、重要な役割を担った人物であり、その生涯は複雑で多面的です。彼は、保守的な官僚として、ナチス政権に協力し、その犯罪に関与した一方、時にはその政策に異議を唱えることもありました。戦後、戦犯として裁かれたことは、彼の行動に対する厳しい評価を物語っています。

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