ルートヴィヒ1世 (フランク王)

ルートヴィヒ1世：信仰と分裂のフランク王国皇帝

ルートヴィヒ1世（778年 - 840年6月20日）は、カール大帝の三男として生まれ、813年に共同皇帝、翌年にはフランク王国の国王、そしてローマ皇帝の座に就きました。父カール大帝の死後、広大な帝国を継承した彼は、信仰心の厚い人物として知られていましたが、その政治手腕は必ずしも優れていたとは言えず、優柔不断な性格も指摘されています。

治世の始まりと宗教観

当初、ルートヴィヒ1世はアクィタニア地方のみを相続する予定でした。しかし、兄たちが早世したため、帝国全土を相続することになったのです。彼は父帝から受け継いだ帝国を統治する一方で、808年と809年にはウマイヤ朝の支配下にあったトゥルトーザを攻撃する軍事行動も行っています。

ルートヴィヒ1世の信仰心は深く、誠実なクリスチャンであったと考えられます。一方で、彼はカール大帝が残した世俗的な歌物語を、キリスト教的ではないという理由で焼却したという逸話も伝わっています。また、華美な生活を好みませんでした。宮廷にいた姉妹たちを修道院へ送ったり、父帝の側近を遠ざけ、代わりにベネディクト戒律を厳格に遵守するアニアーヌ修道院長ベネディクトを側近として重用しました。これは、彼の宗教的志向と、厳格な教会改革への強い関心を反映していると言えるでしょう。

帝国分割と相続争い

817年、アーヘンの王宮の一部が崩壊したことを神の意志と捉えたルートヴィヒ1世は、「帝国計画令（Ordinatio imperii）」を発布しました。この計画令は、帝国を3人の息子に分割相続させることを定めたものでした。長男のロタールにはイタリアを含む広大な領土、次男のピピンにはアクィタニア、三男のルートヴィヒにはバイエルンを割り当て、ロタールを共同皇帝、他の2人を副帝とするものでした。これはフランク王国の伝統的な分割相続と、帝国の統一維持という相反する課題への妥協策でした。

しかし、この計画令はベルンハルト（ピピンの遺児）の反乱を引き起こし、彼は処刑されました。その後、ルートヴィヒ1世はユーディトと再婚し、末子シャルルが誕生します。ユーディトの懇願により、シャルルにも領土を与えることを決定しますが、これが他の息子たちの反発を招きました。兄弟間の対立は、クーデターや反乱、そして帝国分割案の変更を繰り返す、激しい権力闘争へと発展しました。

830年にはロタールを中心としたクーデターにより、ルートヴィヒ1世は一時廃位されましたが、その後復権します。しかし、833年には再びロタールに捕らえられ、翌年に解放されるという波乱の展開が続きました。837年、さらに領土分割が行われましたが、これは三男ルートヴィヒの反乱を招き、父帝は鎮圧に乗り出しますが、840年、フランクフルト近郊で崩御しました。

ルートヴィヒ1世の死後

ルートヴィヒ1世の死後、彼の息子たちはヴェルダン条約で帝国を分割します。三男ルートヴィヒが受け継いだ東フランク王国は、後の神聖ローマ帝国の基礎となりました。四男シャルルが継承した西フランク王国はフランス王国へとつながり、長男ロタールが継承した中部フランク王国は、その後さらに分割されました。

フランス国王ルイ1世

ルートヴィヒはフランス語でルイと呼ばれるため、フランス国王のルイ1世は、彼を指しています。特にブルボン朝では、ルイという名前の国王が多く、ルイ王朝と呼ばれる所以となっています。

子女

ルートヴィヒ1世はエルマンガルド・ド・エスベイとユーディトと結婚し、複数の子供をもうけました。その中には、ローマ皇帝となったロタール1世や、東フランク王ルートヴィヒ2世、西フランク王シャルル2世らが含まれます。これらの息子たちの相続争いが、フランク王国の分裂という歴史的転換点をもたらしたのです。

ルートヴィヒ1世の治世は、信仰心の篤さ、優柔不断な政治手腕、そして複雑な家族関係が絡み合い、フランク王国の運命を大きく変える転換期となりました。彼の死後、ヨーロッパの歴史は大きく動き出し、中世ヨーロッパの政治構造は新たな局面を迎えることになったのです。

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