ルーンクエスト

ルーンクエスト：深遠なる世界と緻密なルールが織りなすRPGの傑作

[1978年]]、ケイオシアム社よりグレッグ・スタフォードを中心としたチームによって生み出された『ルーンクエスト(RuneQuest、略称RQ)』は、『ダンジョンズ＆ドラゴンズ』と並ぶ[[テーブルトークRPG]の古典として知られています。独特の世界観とリアル志向のルールシステムは、多くのTRPGに多大な影響を与え続けています。

グローランサ：魅力的な架空世界

『ルーンクエスト』は、自由に世界観を設定できる柔軟性を持ちますが、多くのプレイヤーが使用する背景世界として「グローランサ」があります。文化人類学や神話学の手法を採り入れた緻密な世界設定は、そのリアリティで高く評価されています。グローランサは、単なる架空世界ではなく、独自の信仰体系、文化、歴史を持つ、生き生きとした世界として描かれています。精緻な設定は、プレイヤーに没入感を提供し、独自の冒険を生み出す土壌となります。最新版『RuneQuest - Roleplaying in Glorantha』では、このグローランサを舞台としたシステムデザインがなされています。2023年12月には、日本語版スターターセットPDFもリリースされ、日本でも再び注目を集めています。

リアル志向のルールシステム

『ルーンクエスト』は、ベーシック・ロールプレイング・システムを採用していますが、17世紀以前のヨーロッパを研究する創造的アナクロニズム協会の調査結果に基づいた戦闘ルールは、他の同系統ゲームと比較してもリアル志向です。命中部位によるダメージ判定や、時間コストを表す「ストライクランク」システムは、戦略的な戦闘を可能にしています。ストライクランクは、行動に時間的な重みを付与し、プレイヤーは状況に応じて最善の戦術を選択する必要があり、緊張感あふれる戦闘展開を演出します。イニシアティブはダイスロールではなく、ストライクランクの合計で決定されるため、戦闘の順番は事前に予測可能です。ただし、状況判断や先読みが求められるため、戦略性と緊張感のバランスが絶妙です。

個性豊かなキャラクター作成

キャラクター作成は、スキル制に基づいており、プレイヤーはまず出身文化圏を選び、出自決定表を参照して出自、職業、地位をランダムに決定します。このシステムは、グローランサの世界観を反映しており、高確率で農民階級出身となるため、冒険者として活躍できるキャラクターを作成するのは容易ではありません。しかし、このリアルさが、ゲームの世界観への没入感を高めています。

特徴的なのは、人間、エルフ、ドワーフといった一般的な種族に加え、トロール、ドラゴニュート、ダックといったモンスター種族もプレイヤーキャラクターとして選択できる点です。特に、ダックやドラゴニュートは『ルーンクエスト』オリジナルの種族であり、ゲームの世界観を象徴する存在となっています。また、グローランサを舞台とする場合、キャラクターが属するカルト（宗派）も重要な要素となります。ほとんどの人々が何らかの神話文化に属しており、信仰する神やカルトによって、独自の特殊能力が得られるようになっています。最新版では、ドラゴン・パス地方出身キャラクターの作成が推奨されており、サーター王国出身であれば部族戦士、司祭、貴族といった冒険者向きの職業が選択できます。

命中部位とストライクランク：緻密な戦闘システム

『ルーンクエスト』の戦闘システムは、命中部位とストライクランク(SR)という独自の要素で構成されています。命中部位によるダメージ判定は、戦闘のリアリティを高め、様々な状況を再現します。一方、ストライクランクは、行動に時間コストを与え、戦略的な戦闘を促します。1ラウンドは10SRまたは12SR(最新版)で構成され、プレイヤーは自身のSRの合計で行動を決定します。行動はラウンド開始前に宣言する必要があり、行動の変更には追加のSRが必要となります(最新版では緩和)。これらのルールは、互いの戦術を先読みする高度な対人戦闘を実現しています。

グローランサの世界観：多様な神話と複雑な歴史

グローランサは、中世ヨーロッパ風ファンタジーとは異なる、独特の世界観を持っています。様々な要素が渾然一体となっており、多くの神々が存在し、それぞれに神話的エピソードが用意されています。神々間の対立や協力関係も設定されており、複雑で魅力的な信仰体系が構築されています。例えば、嵐のパンテオンの主神オーランスと太陽の皇帝イェルムの物語は、様々な神話における共通のモチーフを反映しています。神話には複数のバージョンが存在し、場合によっては矛盾するように記述されているため、ユーザーも巻き込んだ世界観の展開がなされています。また、オーランスのような信仰対象の神々も、単純な正義の化身としてではなく、複雑な性格や行動が描かれています。さらに、ローマ帝国を彷彿とさせるルナー帝国の存在も、グローランサの世界観に奥行きを与えています。

グローランサの世界観は、後のTRPG作品にも大きな影響を与え、『ガープス・ルナル』『アルシャード』『幻想水滸伝シリーズ』などに見られる類似点からその影響が伺えます。

その他の舞台設定と製品群

『ルーンクエスト』はグローランサ以外にも舞台設定があり、第三版では「ファンタジー・ヨーロッパ」が基本ルールブックに採用されています。ファンタジー・ヨーロッパは、魔法や怪物が存在する中世ヨーロッパのパラレルワールドです。この世界には、「ヴァイキング」や「ランド・オブ・ニンジャ」といったヴァリアントも存在しましたが、ランド・オブ・ニンジャは社会問題への配慮から日本語版の発売が中止されました。

日本語版では、ホビージャパンよりルールブック、サプリメント、関連製品などが発売されました。また、日本独自のTRPG「ルーンクエスト・ナインティーズ」も存在します。これは、ルーンクエストを簡略化したもので、英雄戦争をテーマとした冒険に特化しています。

『ルーンクエスト』は、その独特の世界観とリアル志向のルールシステム、そして奥深い設定で、多くのプレイヤーを魅了し続けているTRPGの金字塔と言えるでしょう。

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