レイン (ビートルズの曲)

ビートルズ「レイン」：革新的なレコーディングと時代を先駆けたサウンド

1966年5月、シングル『ペイパーバック・ライター』のB面としてリリースされたビートルズの楽曲「レイン」。アルバム『リボルバー』のセッション中にレコーディングされたものの、同アルバムには収録されませんでした。ジョン・レノンが中心となって制作されたこの曲は、レノン自身によると「天候に一喜一憂する人々を描いたもの」とのことですが、LSDトリップ体験との関連性も指摘されています。

天候と薬物：歌詞に込められた意味

1964年6月、オーストラリア・シドニーを訪れたビートルズは、激しい雨に見舞われます。レノンは「タヒチ以来の大雨だ」と語ったと伝えられており、この経験が「レイン」の創作に影響を与えたと考えられます。歌詞には「雨」と「太陽」が登場しますが、これはLSDトリップ時に体験する現象を表現しているという解釈もあります。楽曲の構成はシンプルで、Gメジャーキーを採用。ギターイントロからスネアドラム、そしてヴァースへと展開する構成は、後のサイケデリック・ロックの先駆けと言えるでしょう。

画期的なレコーディング技術：逆回転サウンドの衝撃

「レイン」のレコーディングは、EMIレコーディング・スタジオで1966年4月に行われました。ビートルズは当時、ADT（人工倍音）やテープ・エフェクトを積極的に使用しており、この曲でもその実験的な姿勢が見て取れます。特に注目すべきは、リズムトラックとベース、バッキング・ボーカルをテープ速度を操作して録音した点です。通常よりも速い速度で録音されたバッキング・トラックに対し、レノンのボーカルは逆に遅い速度で録音され、再生時には高い音程で聴こえるようになっています。

さらに、最後のヴァースではレノンのボーカルが逆回転で使用されており、これはレコード化された楽曲としては初の試みでした。レノン本人は、マリファナの影響下で偶然テープを逆回しにしてしまったのがきっかけだと語っていますが、プロデューサーのジョージ・マーティンは、意図的に逆回転サウンドを取り入れたと証言しています。この逆回転サウンドは、楽曲に独特のサイケデリックな雰囲気と、実験的なサウンドデザインの両面を与えました。

個性溢れるメンバーの演奏：リンゴ・スターのドラム、そしてインド風フレーズ

演奏面においても、「レイン」は個々のメンバーの才能が光る楽曲となっています。ポール・マッカートニーは、歌うようなベースラインを演奏。ジョージ・ハリスンはインド音楽風のフレーズをギターで奏で、楽曲にエキゾチックな彩りを添えています。そしてリンゴ・スターは、この曲を自身のベストプレイと評しており、そのドラミングは音楽評論家からも高く評価されています。特に創造的なドラムブレイクは、楽曲全体の盛り上げに大きく貢献しています。

ミュージックビデオ：初期ミュージックビデオのパイオニア

「レイン」のプロモーションフィルムは3種類制作されました。これは、初期ミュージックビデオの先駆けと言えるもので、メンバー自身もその点を冗談めかして認めています。マイケル・リンゼイ＝ホッグ監督によるこれらの映像作品は、チジック・ハウスの庭園や温室、サウンドステージなどで撮影されました。マッカートニーは撮影の半年前にバイク事故で前歯を折っていたため、歯を見せないように歌っているというエピソードも残っています。

リリースと評価：B面ながら高い人気を獲得

「レイン」はシングル『ペイパーバック・ライター』のB面としてリリースされ、アメリカではBillboard Hot 100で23位を記録するなど、B面曲ながら高い人気を獲得しました。さらに、『ローリング・ストーン』誌の「オールタイム・グレイテスト・ソング500」にもランクイン。その革新的なサウンドと、メンバーそれぞれの高い演奏スキルは、時代を超えて高く評価されています。

数多くのカバーバージョン：時代を超えて愛される名曲

「レイン」は、数多くのアーティストによってカバーされており、その人気は現在も衰えることを知りません。ペトゥラ・クラーク、ホセ・フェリシアーノ、ハンブル・パイ、トッド・ラングレンなど、様々なアーティストが独自の解釈を加えたカバーバージョンを制作しました。これらは、この楽曲が持つ普遍的な魅力を示すものと言えるでしょう。

まとめ：ビートルズの革新性を象徴する名曲

「レイン」は、ビートルズの音楽史において、その革新的なレコーディング手法や、サイケデリックなサウンド、そしてメンバーそれぞれの個性豊かな演奏によって、非常に重要な位置を占める楽曲です。その時代を超えた魅力は、今も多くのリスナーを魅了し続けています。ビートルズの音楽性を探求する上で欠かせない一曲と言えるでしょう。

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