レオニード・ゴビャート

レオニード・ニコラエヴィチ・ゴビャート（Леонид Николаевич Гобято、1875年2月6日 – 1915年5月21日）は、ロシア帝国の軍人であり、特に砲兵技術の進歩に貢献した発明家として知られています。最終階級は中将。彼の生涯は、技術革新と戦争の激動の中で、その才能を開花させた人物として特徴づけられます。

生い立ちと軍歴

ゴビャートは、ロシア南部のタガンログ市で、裕福な家庭に生まれました。彼の父はロシア帝国議会の議員を務めており、社会的に高い地位にありました。1893年、ゴビャートはモスクワの士官学校に入学し、1896年に優秀な成績で卒業。その後、ロシア軍大学に進学し、1902年に卒業しました。この間、彼は軍事技術と戦略に関する専門知識を深めました。

1902年5月、ゴビャートはタガンログ市に戻り、デミドフ大佐と共同で画期的な3インチ速射砲を開発しました。この発明は、彼の技術的な才能を早期に示したものであり、後の迫撃砲の開発につながる重要な一歩となりました。

日露戦争と迫撃砲の開発

1904年に日露戦争が勃発すると、ゴビャートは弟のニコライとともに従軍しました。この戦争において、彼は独自の迫撃砲を開発し、日本軍の今沢義雄中佐が開発した迫撃砲との間で激しい塹壕戦を繰り広げました。この戦いで、日本軍は敵に迫って撃つ砲という意味で「迫撃砲」という名称を考案しましたが、ロシア軍では爆弾を投げるものという意味で「Бомбомёт」という名称を使用しました。興味深いことに、この「Бомбомёт」という単語は後に、旧式のスピガット・モーターを指す言葉として用いられるようになりました。

1905年1月2日、ゴビャートは降伏し、捕虜となりましたが、帰国後の1906年には最初の迫撃砲に関する論文を発表し、その技術的な貢献を明らかにしました。その後、砲兵大学で教鞭を執り、軍事学に関する著書を出版するとともに、各種の迫撃砲を開発し続けました。彼の開発した迫撃砲の中には、第一次世界大戦で使用された9-см бомбомёт типа Г. Р.やБомбомёт системы Аазенаが含まれており、その技術的な影響は広範囲に及びました。

第一次世界大戦と最期

第一次世界大戦が始まると、ゴビャートは砲兵旅団の指揮官としてプシェムィシル要塞でドイツ軍と戦いました。しかし、1915年5月21日、彼は戦火の中で命を落としました。その死後、彼は中将の位を授与され、リャザンに埋葬されました。

ゴビャートの遺産

ゴビャートが発明した迫撃砲は、いわゆるスピガット・モーター（差込式迫撃砲）の始祖とされています。この革新的な砲は、第一次世界大戦でフランスやイギリスが使用した迫撃砲の基礎となり、彼の著作と発明品がこれらの国の技術開発に大きく貢献したと言われています。ゴビャートの功績は、単に兵器を開発しただけでなく、近代的な砲兵戦術の基礎を築いた点にもあります。彼の研究と開発は、後の戦争における兵器と戦術に大きな影響を与えました。

著作

攻撃原則と陣地（Боевые принципы и нормы полевой артиллерии）：1906年出版
歩兵部隊の火力支援（Свойство огня и боевая служба артиллерийского дивизиона）：1911年出版
* 陸軍野戦砲兵（Артиллерия полевых армий）：1913—1916年出版

これらの著作を通じて、ゴビャートは自身の軍事戦略と技術的な知見を広め、後世の軍事専門家たちに貴重な知識を提供しました。彼の名は、軍事史における重要な人物の一人として記憶されています。

ゴビャートは、その生涯を通じて、軍事技術の発展と戦術の進歩に大きく貢献しました。彼の才能は、戦争という過酷な状況の中で、その真価を発揮しました。彼の開発した迫撃砲は、その後の世界的な戦争において重要な役割を果たし、彼の遺産は今日でもなお、軍事技術の分野に影響を与え続けています。

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