今沢義雄

今澤義雄：日露戦争の兵器開発を担った陸軍軍人

今澤義雄（いまさわ よしお）は、1858年（安政5年）に岡崎藩士の家に生まれ、日本の陸軍軍人として、特に日露戦争でその才能を発揮しました。陸軍少将まで昇進し、その功績から従四位・勲三等・功三級を授与されています。

若き日の歩みと軍人としての成長

1875年（明治8年）に陸軍幼年学校に入学し、軍人としての道を歩み始めます。1881年（明治14年）に工兵少尉に任官、1883年（明治16年）には陸軍士官学校を卒業し、工兵科に進みました。その後、仙台鎮台工兵第一中隊小隊長などを歴任し、1891年（明治24年）には陸軍砲工学校教官に就任、専門知識を深めていきます。日清戦争では、第6師団後備工兵第一中隊長として出征し、鴨緑江の軍橋復旧に貢献しました。

日露戦争における革新的な兵器開発

1904年（明治37年）に日露戦争が開戦すると、今澤は第3軍攻城砲兵司令部攻城工兵廠長として出征し、旅順攻囲戦で重要な役割を担います。彼は、難攻不落と謳われた旅順要塞を攻略するために、手榴弾や迫撃砲など、当時としては革新的な兵器を次々と開発しました。その開発した兵器は、以下のようなものが挙げられます。

手榴弾: 竹製、空缶製、ブリキ製など、様々な素材を利用した手榴弾を開発。
迫撃砲: チーク材製の発射筒を用いた迫撃砲は、1kgから1.5kgの弾丸を発射可能で、塹壕戦において大きな効果を発揮。
転送爆発機: 鉄板製防楯の裏に爆薬を仕掛け、車輪で移動させて敵の壕内で爆発させるという、独創的な兵器。
代用隠顕燈: 夜間攻撃用の塹壕灯光器。
改良鉄条網切断鋏: 高圧電流が流れる鉄条網を切断するための絶縁鋏。
鉄条網爆破具: 竹に火薬を詰め、鉄条網上で爆発させて切断する器具。
伏射・膝射防楯: 携帯防楯を伏射・膝射の状態で使用できるように改良。
対壕用防楯: 塹壕防御用の防楯。
白熱点火器応用: 白熱電線を用いて地雷を同時爆破する装置。
手榴弾防網: 敵の手榴弾から防御する金網。
擲弾防楯: 薄い鉄板で塹壕を覆い、手榴弾を後方に落とす防御策。
銃眼防楯: 携帯防楯に銃眼を付けた改良型。
* 転送防楯: 車輪付きの大型防楯。

今澤が開発したこれらの兵器は、旅順要塞攻略において重要な役割を果たし、日本軍の勝利に大きく貢献しました。

戦後の活躍と晩年

日露戦争後、今澤は1905年（明治38年）に陸軍大佐に昇進し、工兵部長に就任しました。その後も陸軍技術審査部工兵部長として活躍し、1910年（明治43年）に陸軍少将に進級するとともに予備役となりました。1918年（大正7年）に退役し、1941年（昭和16年）に83歳でその生涯を閉じました。

今澤の功績は、兵器開発のみならず、戦闘教令の作成にも及びます。特に、『第一期攻略計画案（望台攻略）』は、旅順攻略における重要な戦略指針となりました。また、陸軍砲工学校や海軍大学校での教官経験から、『築城学教程,要塞編制の部』や『仮定 兵術用語界説』などの著作も残しています。

今澤義雄は、技術者としての卓越した才能と、軍人としての勇敢な精神を兼ね備えた人物でした。その功績は、日本の軍事技術の発展に大きく貢献し、後世に語り継がれています。

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