レオン・グーセンス

レオン・グーセンス

レオン・グーセンス（Léon Goossens, CBE, 1897年 - 1988年）は、20世紀を代表するイギリスのオーボエ奏者である。オーケストラの中で重要な役割を担うオーボエを、ソリストとしての可能性を追求し、その地位向上に大きく貢献した人物として知られる。

生い立ちと教育

1897年、リヴァプールにて、ベルギー系の音楽一家に生まれた。父は著名な作曲家・指揮者であったユージン・グーセンス（Sr.）であり、兄ユージン（Jr.）も後に作曲家・指揮者として名を成した。さらに、妹のマリーとシドニーはともに優れたハープ奏者となるなど、グーセンス家はブリティッシュ・クラシック音楽界において特異な存在感を示した。このような音楽的な環境の中で育ったレオンは、幼い頃から音楽への才能を発揮した。

彼はロンドンの名門、王立音楽院でオーボエの専門教育を受けた。アカデミックな訓練を通じて楽器の基礎と音楽理論を深く学び、その類まれな技術と音楽性を磨いていった。

キャリアと活動

王立音楽院を卒業後、レオン・グーセンスはプロのオーボエ奏者としてのキャリアをスタートさせた。初期には、当時の主要なオーケストラに所属し、首席オーボエ奏者として活躍した。オーケストラの中での経験は、アンサンブルの中でのオーボエの役割や、様々な指揮者や作曲家のスタイルを理解する上で貴重な財産となった。

しかし、彼のキャリア後半は、特定のオーケストラに常任で所属するのではなく、ソリストとしての活動に重点を置くようになった。これは、オーボエという楽器が持つ表現力や、自身の卓越した演奏技術をより広く聴衆に伝えるための選択であった。ソリストとして世界各地で演奏する傍ら、彼はSPレコードの時代から積極的に録音を行った。これらの録音は、当時の最高水準のオーボエ演奏を記録しており、彼の音楽的遺産として今日に至るまで高く評価されている。多くの録音を通じて、彼はより多くの人々にオーボエの魅力を伝え、その普及に貢献した。

オーボエ奏者としての功績

レオン・グーセンスの最も大きな功績は、オーボエを単なるオーケストラ楽器としてではなく、リサイタルや協奏曲のソリストとして十分に通用する楽器であることを証明し、その可能性を大きく広げたことである。彼はオーボエのレパートリーの貧困を認識し、積極的に同時代の作曲家たちにオーボエのための作品を委嘱した。アーサー・ブリス、ゴードン・ジェイコブ、ラルフ・ヴォーン・ウィリアムズなど、多くのイギリス人作曲家が彼の依頼に応え、重要なオーボエ作品を生み出した。

これらの委嘱作品の中には、現在ではオーボエ奏者にとって欠かすことのできない、定番中の定番と言えるレパートリーが数多く含まれている。例えば、ヴォーン・ウィリアムズのオーボエ協奏曲やゴードン・ジェイコブの室内協奏曲などは、グーセンスの貢献なくしては生まれなかったか、あるいは現在のような位置づけを得ていなかったかもしれない。彼は単に与えられた楽譜を演奏するだけでなく、作曲家と密接に協力し、オーボエの特性を最大限に引き出すための助言を与えたと言われている。

彼の演奏スタイルは、甘美で豊かな音色、息の長いフレージング、そして高度な技巧に基づいたものであった。特に、ヴィブラートを効果的に使用し、情感豊かな表現を可能にした点は、当時のオーボエ演奏における革新であった。彼の演奏は、後続の世代のオーボエ奏者に多大な影響を与え、現代オーボエ演奏のスタイルの基礎を築いたとも言える。

著書

彼は演奏活動に加え、教育や研究にも関心を持っていた。エドウィン・ロクスバラと共著でオーボエに関する専門書を執筆している。これは、著名なヴァイオリニストであるユーディ・メニューインが監修する音楽ガイドシリーズの一冊として出版された。

* Leon Goossens + Edwin Roxburgh 共著 『Oboe』 (Yehudi Menuhin Music Guides No.4), Macdonald and Jane's, London, ISBN 0 356 08416 7

レオン・グーセンスは、その長いキャリアを通じて、オーボエという楽器の芸術的な地位を確立し、そのレパートリーを豊かにした功績により、今なお多くの音楽家から尊敬を集めている。彼の遺した録音と委嘱作品は、20世紀オーボエ史における重要な遺産となっている。

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