レオン・ブリー

トマ・ギヨーム・ブリーとシネマトグラフの誕生

トマ・ギヨーム・ブリー（Thomas Guillaume Bouly、1872年 - 1932年）は、映画史における重要な役割を果たしたフランスの発明家であり、特に「シネマトグラフ」という言葉の創始者として知られています。彼は連続写真を利用する装置を開発し、1892年にその特許を申請しました。この装置は「運動の分析と合成のための、逆生可能な、写真術および光学的機器」と名付けられ、後にシネマトグラフという名称へと変更されました。

ブリーが作成したシネマトグラフは、理論的には動く画像を撮影し、またそれを投影することができる装置でした。使用されるフィルムは、イーストマン製の感光剤でコーティングされたもので、パーフォレーションは存在せず、コマ送りのメカニズムが採用されていました。これにより、映像を間欠的に再生することが可能になりました。

ところが、フランスの著名な映画史家であるヴァンサン・ミラベルは、著書『Histoire du cinéma pour les nuls』の中で、ブリーの装置が実際に作成されたことがないと記述していますが、これは誤りとされています。実際には、パリ工芸博物館にブリーの製作した装置が保存されています。ただし、それが機能した証拠はなく、当時の報道にもブリーの上映に関する情報は見当たりません。

1894年には、ブリーが特許維持のための負債を支払わなかったため、シネマトグラフの名称は他者が使用できるようになりました。その結果、リュミエール兄弟が1895年にこの名称を使って自らの特許を登録することになりました。ブリーの業績は残念ながらその後の歴史ではあまり評価されていない傾向がありますが、彼の特許はその後注意深く考慮されることとなり、少しずつ彼に対する認識が高まりました。

ブリーはまた、「シネマトグラフ」という名称を考案する際に、古代ギリシャ語やラテン語を用い、ギリシャ語で「運動」を意味する「κίνημα/Kínēma」と、「描く」を意味する「γραϕή/graphê」を組み合わせました。この命名は、彼がリュミエール兄弟よりも早い段階で映画の動く画像技術に対する関心を持っていたことを示しています。実際、1891年にはトーマス・エジソンが「キネトグラフ」という用語を用いて動画を撮影するカメラの開発を進めており、この機構をブリーは特許化しました。

「キネトグラフ」はラテン語のみならず、さまざまな言語で映画を表す言葉の元となり、ドイツ語やロシア語など多くの国において「映画」や「映画館」を意味する「キノ (Kino)」といった言葉が生まれるきっかけとなりました。

彼の業績は、映画技術の発展に寄与した重要な要素であり、シネマトグラフの登場は映像表現の革命をもたらしました。ブリーの名前は、初期の映画史においては忘れ去られたかもしれませんが、彼の発明は映画産業全体に深い影響を与え続けているのです。彼の貢献は今後ますます評価されるべきであり、映画の歴史における重要な位置を占めています。

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