レカ・ゾグ (1939-2011)

レカ・ゾグ：波乱の生涯を辿るアルバニア王太子

レカ・ゾグ（1939年4月5日 - 2011年11月30日）は、アルバニアを揺るがした歴史的転換期を生き抜いた人物です。アルバニア王国最後の王、ゾグ1世とその王妃ゲラルディナの間のたった一人の息子として生まれた彼は、生後間もなくイタリア軍によるアルバニア侵攻を経験し、国外へと逃れることになります。幼少期をイングランドで過ごし、その後エジプトへ移住。エジプトの英国人学校、スイスの名門校エイグロン・カレッジで教育を受け、パリ大学で経済学を専攻、さらにサンドハースト王立陸軍士官学校を卒業するなど、国際的な教育を受けて洗練された人物へと成長しました。イギリス陸軍少尉としての経歴も持ちます。

1961年、父ゾグ1世の死をきっかけに、レカはアルバニア王家の家督を継承します。パリの高級ホテルで亡命中の王制支持者たちを集め、即位式を行い、アルバニア王家家長としての地位を確立しました。同時に、スカンデルベク騎士団長などの要職にも就き、アルバニア王室の伝統と権威を継承していくことを明確に示しました。

その後、オーストラリア人女性スーザン・カレン＝ウォードと結婚し、マドリード、ローデシア（現在のジンバブエ）、そして南アフリカ共和国と、各地を転々とする亡命生活を送ります。南アフリカではヨハネスブルクの高級住宅街に長年居住しました。しかし、それぞれの国で様々な困難に直面します。マドリードでは自宅への武器所持を理由に国外退去を余儀なくされ、ローデシアでは政権交代の波に巻き込まれるなど、常に流動的な状況の中で生活を余儀なくされました。

アルバニアで社会主義体制が崩壊した1993年、レカは祖国アルバニアへの帰国を試みます。しかし、入国申請書の職業欄に「国王」と記入したことが原因で、入国を拒否されます。この出来事にも関わらず、空港には約500人の王制支持者が集まり、彼の帰国を熱烈に歓迎しました。これは、アルバニアにおけるレカの人気と、王政復古への期待の高さを示す象徴的な出来事でした。

1997年のアルバニア暴動の際には、再びアルバニアへの入国を試みました。この時は、2000人を超える支持者が空港に集まり、彼の帰国を待ち望んでいたことを示しました。その後行われた国民投票では、君主制復活を支持する票は全体の3分の1に留まり、王政復古は実現しませんでした。国民投票の結果にレカとその支持者が異議を唱えたことがきっかけで、警察の介入による騒乱が発生し、レカは再び国外退去を余儀なくされ、本人不在のまま禁錮3年の判決を受けました。しかし、2002年にアルバニア国会が元王家の帰国を許可する決議を行い、レカの禁錮刑も特赦となり、同年6月にはついに祖国アルバニアへの帰国を果たしました。

帰国後、レカは国民発展運動（LZHK）の党首を務め政治活動に携わりましたが、2006年には公的活動を引退。2011年11月、72歳で亡くなりました。ティラナ郊外のシャラ公営墓地にて、母と妻の隣に埋葬されました。レカには妻との間に一人息子がおり、その息子はレカ・アンワル・ゾグ・レザー・ボードゥアン・ムシジヴェと名付けられました。レカ・ゾグの生涯は、激動の時代を生き抜いたアルバニア王家の悲劇と希望、そして祖国への深い愛を物語っています。彼の波乱に満ちた人生は、今後も歴史に刻まれることでしょう。

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