レキュトス

レキュトス：古代ギリシアの油壺と葬送儀礼

古代ギリシアで用いられていたレキュトスは、優雅なフォルムと精緻な絵付けが特徴的な陶器です。主にオリーブ油の貯蔵に用いられ、その形状は細く伸びやかな首と丸みを帯びた胴部を持つのが一般的です。持ち運びやすいよう、首の部分には取っ手が一つ付いています。

レキュトスの多くは、墓から出土しています。古代ギリシアでは、亡くなった未婚男性の遺体に油を塗布する際にレキュトスが使われていたと考えられており、葬送儀礼と密接な関係を持っていたことが伺えます。そのため、レキュトスに描かれる絵柄には、日常生活の様子や儀式の様子だけでなく、葬送にまつわる情景や死者の魂を表現したとされるものも多く見られます。これらの絵柄は、必ずしも精細に描かれているわけではなく、概略的な表現で陰鬱な印象を与えるものも多いのが特徴です。

レキュトスの歴史は古く、紀元前700年ごろから製作されていたと推測されます。最盛期は紀元前5世紀頃で、様々な形状や大きさ、絵付け技法のレキュトスが製作されました。

レキュトスの種類

レキュトスは、大きく分けて以下の5つの種類に分類されます。

1. 標準型レキュトス: 高さ30cmから50cm程度のものが一般的ですが、中には葬送用の石碑の代わりとして使われた、1メートルにも及ぶ巨大なものも存在します。

2. デイアネイラ型レキュトス: コリントス地方で発祥したとされる、卵形の丸い肩を持つ小型のレキュトスです。大きさは約20cm程度で、紀元前6世紀末の黒絵式陶器の初期から製作されていました。

3. 二次型レキュトス: 紀元前5世紀中頃、標準型レキュトスから派生したと考えられています。肩の部分の直径が最も大きいのが特徴で、白地技法で絵付けされたものが多く、大きさは約20cmです。

4. スクワット型レキュトス: 高さが20cmに満たない、丸みを帯びた下部が特徴的な小型のレキュトスです。

5. エイコーン型レキュトス: 比較的珍しい形状で、横から見ると卵型をしています。底部には網目状の凹凸が刻まれているのが特徴です。

レキュトスの絵付け

レキュトスの絵付けは、時代や種類によって様々です。日常生活の情景や神話、儀式、そして葬送にまつわる場面などが描かれており、古代ギリシアの人々の生活や信仰を知る上で貴重な資料となっています。黒絵式や赤絵式など、様々な技法が用いられており、その精緻な描写は、現代の私たちを古代ギリシアの世界へと誘います。

まとめ

レキュトスは、単なる油壺としてだけでなく、古代ギリシアの葬送儀礼や信仰、そして人々の生活を反映した重要な考古学的遺物です。その多様な形状や絵付けは、古代ギリシア文化の豊かさと奥深さを私たちに伝えてくれます。これらのレキュトスから、古代ギリシアの人々の生活や文化、そして死生観の一端を垣間見ることができるのです。

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