レクイエム (2009年の映画)

『レクイエム』（原題：Five Minutes of Heaven）は、2009年に制作されたイギリスとアイルランド合作の社会派映画です。監督はオリヴァー・ヒルシュビーゲル、主演はリーアム・ニーソンとジェームズ・ネスビットといった実力派俳優が務めています。舞台は、数々のテロ事件に見舞われた北アイルランド紛争下の1975年。そして物語は、それから30年以上が経過した現代へと移ります。

映画は、1975年に発生したテロ事件を軸に物語が展開します。17歳のアルスター義勇軍メンバー、アリスター・リトルは、報復テロとして19歳のカトリック教徒、ジム・グリフィンを殺害します。しかし、その残酷な現場をジムの8歳の弟、ジョーが見てしまったのです。

時は流れ、33年後。テレビ番組の企画で、加害者であるアリスターと被害者の弟ジョーは、30年以上ぶりに顔を合わせる事になります。アリスターは事件後、無期懲役の刑に服しますが、12年後に出所。服役中は深く罪の重さを悔い、出所後は自身の過ちを繰り返さないよう、若い世代に語りかける活動をしていました。一方、ジョーは兄を殺されたというトラウマ、そして母親からの絶え間ない責め苦に苦しみ続けていました。

番組の撮影現場で、ジョーはアリスターへの復讐を企て、ナイフまで用意していました。しかし、直前でカメラの前での対面を拒否し、その場を去ります。その様子を遠くから見ていたアリスターは、ジョーに自ら会いに行くことを決意します。

この映画は、史実とフィクションを巧みに融合させ、北アイルランド紛争の暗い影と、その傷跡が人々の心に刻み込まれた現実を描き出しています。リーアム・ニーソンとジェームズ・ネスビットの演技は、観客の心に深く突き刺さるほどの迫力と繊細さを兼ね備えており、それぞれの複雑な感情を完璧に表現しています。

『レクイエム』は、イギリスでは劇場公開されず、2009年4月5日にBBC Twoでテレビ放送されました。日本でも劇場公開はありませんでしたが、2009年の東京国際映画祭で上映され、『5分間の天国』という邦題で紹介されました。その後、DVDが発売され、多くの日本人の目に触れる機会を得ました。

海外ではブルーレイディスクも発売されており、世界中で高い評価を得ています。2009年1月にはサンダンス映画祭で、World Cinema Directing Award（監督賞）とWorld Cinema Screenwriting Award（脚本賞）を受賞しており、その質の高さが証明されています。

Rotten Tomatoesでは44件のレビューのうち75%が好意的で、平均点は10点満点中6.6点と高い評価を得ています。Metacriticでも15件中11件が高評価、平均点は100点満点中62点と、批評家からも高い評価を得ています。批評家からは、オリヴァー・ヒルシュビーゲルの演出と、リーアム・ニーソンとジェームズ・ネスビットの演技が高く評価されています。

『レクイエム』は、単なる紛争映画ではなく、憎しみと許し、復讐と和解といった人間の普遍的なテーマを深く掘り下げた、考えさせられる作品です。北アイルランド紛争という重い歴史的背景を持つ物語ですが、人間ドラマとしての普遍性も持ち合わせており、世界中の多くの観客の心に響く作品と言えるでしょう。

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