レクチン

レクチンとは

レクチン（lectin）は、単糖や糖鎖と可逆的に結合するタンパク質の総称です。これらのタンパク質は、生物やウイルスの中に広く存在しており、多様な機能を持っています。特に、糖鎖に結合する抗体や、糖鎖を触媒する酵素はこのグループには含まれません。

歴史

レクチンの研究は19世紀に始まり、1888年にエストニアのドルバト大学で医師のPeter Hermann Stillmarkが、トウゴマの種子から毒素タンパク質「リシン」と赤血球凝集素「ヘマグルチニン」を発見したことがきっかけです。この研究は、後のレクチン研究の重要な出発点となりました。
やがて、様々な植物から他の凝集素が発見され、これらの凝集素が細胞表面の糖タンパク質や糖脂質の糖鎖と結合することが分かりました。

1950年代から70年代にかけて、白血病を患う白血球の糖鎖に変化が現れることが知られ、その変化に対してコムギ胚芽凝集素の反応が増すことが、多くの研究者によって明らかにされました。さらに、免疫学者のWilliam C. BoydとElizabeth Shapleighがリママメの凝集素が特定の血液型に対して選択的に作用することを観察し、これにより「レクチン」という名前が生まれました。これは、ラントシュタイナーによるABO式[[血液型]]の発見にも関係しています。

1960年代には、がん学者のPeter Nowellが、インゲンマメのレクチンPHAが末梢血リンパ球の有糸分裂を促進することを示し、細胞の増殖現象を解明しました。この発見はヒトの染色体の核型観察を容易にするための重要な基盤となりました。1980年代以降は、動物レクチンによる細胞の死活性についての研究が進み、糖鎖とタンパク質間の相互作用が細胞の増殖調整に関与することが理解されてきました。

レクチンの機能と種類

レクチンには多くの種類があり、その機能は多様です。代表的なレクチンの一次構造ファミリーには以下のようなものがあります。

• - R型レクチン：細菌や古細菌に広く存在します。
• - カルネキシン・カルレティキュリン：真核生物に存在し、糖タンパク質のフォールディングに関与します。
• - C型レクチン：多細胞動物に広く存在し、カルシウム要求性を持つセレクチンやコレクチンが含まれます。
• - ガレクチン：動物や真菌に存在し、β-ガラクトシドに結合します。
• - L型レクチン：マメ科植物や動物細胞に最も多く見られます。
• - P型レクチン：リソソーム酵素の細胞内輸送に関与しています。
• - I型レクチン：免疫グロブリン骨格を持つシグレックが含まれます。

動物レクチンは、生物の進化系統樹において広く発見される一方で、植物や菌類、原生生物に関する知見も年々増加しています。例えば、日本では、ウナギの血中に含まれるレクチンがヒトのO型赤血球を凝集することが1935年に報告されています。

まとめ

レクチンは生物多様性の一環として、細胞間での相互作用や免疫応答に重要な役割を果たしています。今後もレクチンの機能とそのメカニズムについての研究が進むことで、医学や生物学の新たな知見が得られることが期待されています。

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