トウゴマ

トウゴマ（唐胡麻）

トウゴマ（学名：Ricinus communis）は、トウダイグサ科トウゴマ属に分類される多年草です。一般的にはヒマ（蓖麻）とも呼ばれています。トウゴマは、その種子から得られる油、ひまし油（蓖麻子油）が広く利用されていますが、同時に種子にはリシンという非常に毒性の高いタンパク質が含まれていることでも知られています。

属名のRicinusは、ラテン語で「ダニ」を意味しており、トウゴマの果実の形状がダニに似ていることに由来しています。これは果実に独特の模様と突起があるためです。トウゴマは栽培品種が非常に多く、その生育状況や形態は個体によって大きく異なります。多年生で小さな木になるものもあれば、一年生で非常に小さく育つものもあります。葉の形や色も多様で、育種家によって分類され、観葉植物としても栽培されています。また、植物学者のリンネによって1753年に出版された『植物の種』にも記載されています。

特徴

トウゴマは、トウゴマ属の中で唯一の種です。原産地は東アフリカと考えられていますが、現在では世界中に分布しています。公園などでは観葉植物として利用されることも多くなっています。

種子は40～60％の油分を含み、主にリシノレイン酸などのトリグリセリドが豊富に含まれています。また、毒性アルカロイドのリシニンも含まれています。トウゴマの種子は、紀元前4000年頃のエジプトの墓からも発見されており、古代から利用されていたことがわかります。ヘロドトスなどの古代ギリシャの旅行者は、ひまし油を灯油や身体に塗る油として使用していたと記録しています。インドでは紀元前2000年頃から、ひまし油を灯油や便秘薬として使用していたという記録も残っています。中国でも数世紀にわたり、内用や外用の医薬品として処方されてきました。

日本では、ひまし油は日本薬局方に収載されており、下剤として利用されています。ただし、種子に含まれるリシンは猛毒であるため、使用の際は細心の注意が必要です。特に妊娠中や生理中の女性は使用を避けるべきです。種子を直接口にすることは非常に危険であり、子供が誤って摂取すると重大な事故につながる可能性があります。

第二次世界大戦後には、長野県でトウゴマからポマードを製造していた記録も残っています。

生産

現在、トウゴマは世界中で年間約100万トン生産されています。主な生産地はインド、中国、ブラジルであり、これらの国々では積極的な生産計画が実施されています。

注意事項

トウゴマは、その有用性と同時に毒性も併せ持つ植物です。ひまし油は適切な用途で使用すれば有益ですが、種子の摂取は厳禁です。特に小さなお子さんがいる家庭では、トウゴマの種子を手の届かない場所に保管し、誤食を防ぐための対策が必要です。

関連事項

• - ひまし油
• - リシン (毒物)

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