レゾリュート

レゾリュート（英語名：Resolute、イヌクティトゥット語名：Qausuittuq）は、カナダ北部に広がる広大なヌナブト準州、その中でもクィキクタアルク地域に位置する小さな村落です。この村は、クイーンエリザベス諸島を構成する主要な島の一つであるコーンウォリス島の南端部に位置しており、島内においては唯一の人が定住する場所となっています。北極圏という極めて厳しい自然環境の中にありながら、この地は戦略的な重要性も持っています。

村の名前である「レゾリュート」は、かつて北極探検に関わったイギリス海軍の軍艦HMSレゾリュートに由来しています。この船は、19世紀半ばにフランクリン隊捜索のために北極海を航海し、氷に閉じ込められた後に放棄されましたが、後にアメリカの捕鯨船に発見・回収され、修復後にイギリスへ返還されるという数奇な運命をたどりました。その船名が、この地の名として受け継がれています。イヌクティトゥット語での名称「Qausuittuq」は、「夜が明けない場所」あるいは「太陽が昇らない場所」といった意味合いを持ち、極夜がある北極圏の地理的特徴をよく表しています。

レゾリュートは、その地理的位置ゆえに、交通や物流の要衝としての役割も担っています。村の最も重要な施設の一つがレゾリュート湾空港（Resolute Bay Airport）です。この空港は、北極圏における航空輸送の拠点となっており、他の地域との人や物資の移動に不可欠な存在です。厳しい気候条件の中で安定した運航を維持するため、特別な設備や運用体制が整えられています。

村の規模は小さいながらも、住民の生活を支える基本的な施設が設けられています。食料品などを扱う食料雑貨店、日用品などを扱う小売店があり、遠隔地での生活に必要な物資を供給しています。また、外部からの訪問者や研究者、あるいは航空機利用者のためにホテルやレストランも存在しており、宿泊や食事のニーズに応えています。さらに、北極圏での移動手段として重要な役割を果たすスノーモービルの賃貸業者もあり、地域内の移動やレジャー活動に利用されています。

レゾリュートの人口は、近年減少傾向にあることが、カナダ統計局による国勢調査データから明らかになっています。2006年の調査では229人が暮らしていましたが、2011年には214人に減少し、そして直近の2016年の調査では198人となっています。これは、北極圏の他の多くの小規模集落と同様に、厳しい生活環境、雇用の機会の限定、あるいは若い世代の都市部への流出といった様々な要因が複合的に影響している可能性が考えられます。人口規模は小さいものの、この村はイヌイットの人々を中心に構成されており、彼らの伝統的な生活や文化が息づいています。

レゾリュートという地名に関連して、その周辺の地理的特徴にも同じ名が冠されています。村の近くにある湾はレゾリュート湾と呼ばれており、歴史的には船が停泊する場所として利用されてきました。また、前述のレゾリュート湾空港は、この地の玄関口として機能しています。しかし、この空港の近くでは痛ましい航空機事故も発生しています。2011年8月20日、レゾリュート湾空港へ着陸しようとしていたファーストエア6560便、ボーイング737型機が、空港からわずか1.8キロメートルほど離れた丘に墜落するという事故が起きました。この事故は、北極圏での航空機運航の難しさを示す事例として知られています。

レゾリュートは、地理的には孤立した厳しい環境にありますが、北極圏における科学研究、資源探査、あるいは主権維持といった観点から、重要な役割を担う可能性を秘めた場所です。歴史的な背景、極地での生活様式、そして近年の人口動態など、様々な側面から注目されるべき集落と言えるでしょう。

もう一度検索