レッド・カーペット・マサカー〜美しき深紅〜

『レッド・カーペット・マサカー〜美しき深紅〜』（原題：Red Carpet Massacre）は、イギリスの著名なロック・バンド、デュラン・デュランの2007年に発表されたスタジオ・アルバムであり、彼らの作品の中で12作目にあたります。このアルバムは、カヴァー・アルバムを除けば、完全なオリジナル作品として位置づけられています。

製作の背景

デュラン・デュランは、前作『アストロノート』（2004年）の続編として、よりダークで社会的なテーマを内包したアルバム『Reportage』の制作を進めていました。この作品は、イラク戦争やアフガニスタン紛争に対する批判的な視点を反映したもので、バンドメンバーのニック・ローズは当時の世界情勢への不満を表現する意図がありました。しかし、レーベル側はヒット作品を求めるあまり、その内容に危惧を示し、一部楽曲の制作にティンバランドを共同プロデューサーとして招くことが求められました。

その結果、バンドのギタリスト、アンディ・テイラーはこの方向性に納得ができず、脱退を選択。このため、当初の『Reportage』の制作は棚上げとなり、新たに貴重な音楽的視点をもたらすティンバランドの人脈と共に、一からアルバムを作り直すことに決定しました。なお、ローズはこのアルバムの後に『Reportage』について発表する意欲を示しており、かつてのルーツに立ち返ったと語っています。2011年にはジョン・テイラーがティンバランドの起用がレーベルの主導によるものであったと明かし、制作過程が困難だったとコメントしています。

アルバムのシングルとツアー

収録曲の中で特に注目されたのは「ナイト・ランナー」と「フォーリング・ダウン」であり、後者にはジャスティン・ティンバーレイクが関与しました。サイモン・ル・ボンは「フォーリング・ダウン」が1993年の「オーディナリー・ワールド」を意識した楽曲であることを説明していますが、実際にはティンバーレイクのヒット曲を意識した要素も取り入れられました。

また、2006年にスタートしたアメリカ・ツアーでは、ドミニク・ブラウンがサポート・ギタリストとして参加し、アルバムの正式タイトルはまだ確定していない状況でした。日本盤のリリースは当初予定された日程から数度の延期を経て、最終的には2007年12月に行われました。

アルバムの反響

本作はイギリスにおいては商業的には成功を収められず、先行シングル「フォーリング・ダウン」は全英シングルチャートで52位、アルバムは最高44位に止まりました。一方、イタリアでは「フォーリング・ダウン」がシングルチャートで2位に達し、アルバムも10位に入るという成果を収めています。アメリカのBillboard 200では36位に達し、前作に続いて全米トップ40入りを果たしました。

音楽的評価

音楽界の評価も分かれました。オールミュージックのマット・コーラーは5点満点中3.5点を付け、デュラン・デュランが新たなプロデューサーと協力し、現代的なダンス・ポップを取り入れた点を評価しました。一方で、ガーディアンのキャロライン・サリヴァンは、音楽的冒険を強調しながらも、かつてのメロディの素晴らしさが欠けていると指摘しています。また、ポップマターズのジョン・バーグストロムは、このアルバムがデュラン・デュランらしさを失い、単なる良いアルバムに留まったと述べています。

収録曲リスト

- ヴァリー – "The Valley" – 4:57
- レッド・カーペット・マサカー – "Red Carpet Massacre" – 3:16
- ナイト・ランナー – "Nite-Runner" – 3:58
- フォーリング・ダウン – "Falling Down" – 5:41
- ボックス・フル・オブ・ハニー – "Box Full O' Honey" – 3:10
- スキン・ダイヴァーズ – "Skin Divers" – 4:23
- テンプテッド – "Tempted" – 4:24
- トリックト・アウト – "Tricked Out" – 2:46
- ズーム・イン – "Zoom In" – 3:27
- シーズ・トゥー・マッチ – "She's Too Much" – 5:14
- ダーティ・グレイト・モンスター – "Dirty Great Monster" – 3:36
- ラスト・マン・スタンディング – "Last Man Standing" – 4:02
- 日本盤ボーナス・トラック:

- クライ・ベイビー・クライ – "Cry Baby Cry" – 3:55

このアルバムは、デュラン・デュランが新たな挑戦をする中で創り出された作品であり、バンドの音楽的進化を象徴しています。

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