レッド・マウンテン

2003年に公開されたインド映画『レッド・マウンテン』（原題：LOC Kargil）は、1999年にインドとパキスタン間で発生したカルギル紛争を題材とした壮大な戦争映画です。監督、製作、脚本を一手に担ったのは、戦争映画の巨匠として知られるJ・P・ダッタ。

この作品は、カルギル紛争の中でも特に重要な局面であったヴィジャイ作戦や、トローリングでの激しい戦闘に焦点を当て、兵士たちの過酷な戦いと人間ドラマを描き出しています。その上映時間は実に247分にも及び、これは当時のインド映画史上において5番目に長い作品となる記録的なものです。この長大な尺によって、紛争の複雑さや兵士たちの葛藤が多角的に描かれています。

物語は1999年5月、インドとパキスタンが領有権を争うカシミール地方の管理ライン（LOC）、そのインド側であるカルギル地区から始まります。この地でパトロールにあたっていたインド軍部隊との通信が次々と途絶する異常事態が発生。カシミールに駐屯していた部隊は直ちに捜索隊を派遣しました。当初、この攻撃はパキスタン側から侵入した反インド政府ゲリラによるものと見られていましたが、その後の調査によって、攻撃の背後にパキスタン正規軍の組織的な関与があることが明らかとなります。

事態を重く見たインド軍上層部は、治安回復のために大規模な部隊を派遣。しかし、これによりインドとパキスタンの両国軍は直接的な武力衝突に突入することになります。これは、第三次印パ戦争終結から実に28年ぶりの、両国間における大規模な直接対決であり、後に「カルギル紛争」として世界に知られることとなる激しい戦いの幕開けでした。映画はこの紛争における兵士たちの視点から、極寒の高地での戦闘、困難な補給、そして故郷に残した家族への思いなどをリアルに描き出します。

音楽面も本作の重要な要素です。劇中歌はアヌー・マリクが担当し、心に響く楽曲を提供。背景音楽はアディーシュ・シュリーヴァースタヴァが手掛け、緊迫感あふれる戦闘シーンや感動的なドラマシーンを彩りました。特にサウンドトラックは高い評価を得て、150万枚という驚異的なセールスを記録しています。

また、本作にはインド映画界を代表する非常に多くの俳優が出演しており、アンサンブルキャストも注目すべき点です。カルギル紛争で活躍した実在の兵士や関係者を演じたキャストには、ラージ・バッバル（クシャール・タクール役）、キラン・クマール（ウメシュ・シン・バワ役）、アシーシュ・ヴィディヤルティ（マゴッド・バサッパ・ラヴィンドラナス役）、スディーシュ・バリー（ラリット・ラーイ役）、サンジャイ・ダット（ヨーゲシュ・クマール・ジョーシー役）、モニシュ・バール（ラヴィンドラナス・ヴィシュワナタン役）、カラン・ナート（ラジェシュ・シン・アディカリ役）といったベテラン勢に加え、アジャイ・デーヴガン（マノージュ・クマール・パンディ役）、スニール・シェッティ（サンジャイ・クマール役）、サイーフ・アリー・カーン（アヌージ・ナヤール役）、アビシェーク・バッチャン（ヴィクラム・バトラ役）、マノージュ・バージペーイー（ヨゲンドラ・シン・ヤーダヴ役）、アッキネーニ・ナーガールジュナ（パドマパニ・アーチャールヤ役）、サンジャイ・カプール（ディーパク・ランパル役）など、当時の人気スターたちが多数顔を揃えています。さらに、女性キャストとしてラーニー・ムカルジー（ヘマ役）、カリーナ・カプール（シムラン役）、ラヴィーナー・タンダン（ランパルの妻役）、イーシャ・コピカール（サント役）、デヴィヤ・ダッタ（ヤダブの妻役）らが出演し、戦場の兵士たちを支える家族の視点も描かれています。これだけ多くのスターが集結したことも、本作のスケールの大きさを物語っています。

『レッド・マウンテン』は、単なる戦争アクションにとどまらず、紛争の悲劇性や兵士たちの献身、そして国家間の緊張を描いた、インド映画史に残る一作と言えるでしょう。

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