レバノンスギ

レバノンスギ（Cedrus libani）

レバノンスギは、マツ科に属する針葉樹で、学名はCedrus libaniです。多くの場合、レバンオンシーダーとも呼ばれ、特にレバノン、シリアに見られるこの木は、過酷な気候条件に適応しています。レバノンスギは平均で高さ35メートル、直径2.5メートルに達し、成熟した木は特にその姿が美しく、枝はほぼ水平に伸びています。特筆すべきは、成木から重い枝が突然折れて落ちることがある点です。樹皮は暗灰色で、特有の香りのある天然樹脂を分泌します。

葉は針状で、青緑色の密集したものが特徴です。また、1年おきにレモンサイズの卵形の球果ができ、成熟過程で小さな種子を周囲に散布します。古代の地中海沿岸地域において広範囲に分布していたものの、過剰な伐採によりレバノンスギの原生林は壊滅的な状況に追い込まれました。

用途と文化的意義

古代から、レバノンスギはその高い耐久性から建材として重宝されてきました。特に『旧約聖書』では香柏（こうはく）として言及されており、ソロモン王の神殿建設にも使用されたことが記録されています。また、ギルガメシュ叙事詩では、この木が持つ神聖な力が表現されており、自然の力に対する人間の闘いを象徴しています。

レバノンスギの木材は、古代エジプトやメソポタミアにおいても重要な役割を果たし、船や建物の材料として利用されてきました。フェニキア人などはこの木を利用し、交易品として広め、地中海全域にその名を広げました。木材から採れる香り高い樹脂は、また防腐剤としても使用されており、ファラオの墓に用いられたという歴史もあります。

保全の状況

今日、レバノンスギはIUCNレッドリストにおいて「脆弱（VULNERABLE）」に分類されています。2000年代から植樹活動が行われ、特に国の重要な文化財として保護されています。現在はレバノンやシリアの一部地域、特にカディーシャ渓谷や神の杉の森が保護対象として有名であり、これらの場所は世界遺産にも登録されています。

レスコは、レバノンスギをシンボルとした国旗や国章が存在し、文化的にも大切にされています。レバノンの要請により、残存するレバノンスギを守るための努力が続けられていますが、トルコ南部のタウルス山脈が現在の主な自生地として認識されています。

レバノンスギはその美しさと独特な香り、長い歴史から多岐にわたり利用される植物です。無形文化遺産としての存在感も強めつつあります。

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