レフォスコ

レフォスコ (Refosco)

レフォスコは、イタリア北東部からスロベニア、クロアチアにかけて広がる地域で古くから栽培されている黒ブドウ品種群の総称です。特にヴェネト州、フリウリ＝ヴェネツィア・ジュリア州、イストリア半島、クラス地方などで見られます。

品種

長年にわたり、「レフォスコ」という名称が様々な品種に用いられてきたため、その系統を整理することは困難でした。しかし、21世紀に入ってからDNA型鑑定を用いた研究が進められ、いくつかの品種が明確に区別・分類されるようになりました。

主なレフォスコの品種:

レフォスコ・ダル・ペドゥンコロ・ロッソ (Refosco dal Peduncolo Rosso)
最も知られているレフォスコ種で、赤い果柄が特徴です。プラムの風味とアーモンドの香りがかすかに感じられ、酸味がやや強く、晩熟です。近年では、国際的な味覚の志向に合わせるため、新品のオーク樽や低温発酵が用いられています。フリウリ・コッリ・オリエンターリでよく見られます。
レフォスコ・ディストリア (Refosco d'Istria)
イタリアのトリエステ周辺からスロベニア、クロアチアのイストリア半島で栽培されています。テッラーノおよびテランを同一種として扱います。
テッラーノ (Terrano) / テラン (Teran)
トリエステ周辺のカルソ DOCやスロベニアのクラス地区の代表的な赤ワイン用ブドウ品種です。クロアチア側のイストリア半島でも栽培されています。名称をめぐっては、スロベニアとクロアチアの間で意見の相違があります。
レフォスコ・ノストラーノ (Refosco Nostrano)
ファエーディスを中心としたウーディネ県北東部の地域で栽培されている品種です。他のレフォスコ系列種と比べて樹勢が強く、収量が多いのが特徴です。若いうちはタンニンが強いですが、赤い果実味を引き出すことができます。
レフォスコ・ジェンティーレ (Refosco Gentile)
レフォスコ・ノストラーノと親子関係にあり、フリウリ・コッリ・オリエンターリで見られる希少な品種です。果房が小さく、収量が少ないのが特徴です。酸味が強いワインができます。
レフォスコーネ (Refoscone)
レフォスコ・ノストラーノと同じくファエーディス近辺で栽培されていますが、異なる品種です。果皮が薄く、貴腐を起こしやすく、うどんこ病にかかりやすいのが難点です。
レフォスコ・ビアンコ (Refosco Bianco)
白ブドウ品種で、他のレフォスコ系列種との類縁関係はありません。アロマが強く、柑橘類やハーブ、トロピカルな果実を思わせるワインができます。

起源と歴史

ブドウ品種学者のなかには、古代ローマのプッキヌム (puccinum) がレフォスコから作られたワインであったと考える者もいます。古代ローマの博物学者大プリニウスは、レフォスコ系列種のワインを高品質であると賞賛しています。ジャコモ・カサノヴァもレフォスコのワインを好んだとされています。

ワイン生産地域

イタリアでは、フリウリ＝ヴェネツィア・ジュリア州東部に集中しており、レフォスコ・ダル・ペドゥンコロ・ロッソは、同州の他の地域やヴェネト州東部でもワインに使用されています。また、エミリア＝ロマーニャ州ではレフォスコ・ディストリア (テッラーノ) が栽培されています。

主なD.O.C.認定地区:

フリウリ・コッリ・オリエンターリ DOC
カルソ (もしくはカルソ=クラス) DOC
ロマーニャ DOC

スロベニアでは、イタリアのトリエステ県と隣接するクラス地区で、レフォスコ・ディストリア (現地名テラン) が栽培されています。イストリア半島のクロアチア側でも栽培されています。

アメリカ合衆国(カリフォルニア州)、ニューメキシコ州、南米(アルゼンチンのメンドーサ、チリのコルチャグア)でも栽培されています。

他品種との類縁関係の検証

DNA分析の結果、レフォスコ・ダル・ペドゥンコロ・ロッソは、マルツェミーノが親種、コルヴィーナが子種、ロンディネッラが孫種にあたることが判明しました。また、テロルデゴの孫種にあたることから、イタリア北東部の固有種の系統図において重要な位置を占めています。

かつてはモンデュース・ノワールと同一種ではないかと考えられていましたが、DNA型鑑定によって否定されています。

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